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名探偵コナン 世紀末の魔術師のbackpackerのレビュー・感想・評価

4.0
◾︎劇場版名探偵コナン第3作

【作品情報】
公開日   :1999年4月17日
作品時間  :100分
監督    :こだま兼嗣
製作会社  :小学館、よみうりテレビ、小学館プロダクション、ポリグラム、東宝、キョクイチ東京ムービー
脚本    :古内一成
原作    :青山剛昌
音楽    :大野克夫
撮影    :野村隆
配給    :東宝
主題歌   :『ONE』(B'z)
出演(声) :高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、山口勝平、茶風林、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、桜井菜桜、堀川亮、林原めぐみ、篠原恵美、大塚周夫大塚芳忠、他

【作品概要】
『名探偵コナン』の劇場版第3作。
灰原哀、服部平次、遠山和葉、怪盗キッド等、コナンシリーズに欠かせないキャラクターの多くは、本作からの登場となっている。

ロシア帝国最後の王朝ロマノフ家の財宝"インペリアル・イースター・エッグ"を巡るミステリーアドベンチャーという形式の本作では、現実の歴史に創作を交えた虚実入り混じる手法を用い、コナンワールドをさらに飛躍させた作品である。

【作品感想】
〈混迷と疑惑の闇に一条の光を〉

金細工師のピーター・カール・ファベルジェが、ロシア皇帝の依頼により19世紀後半から制作していた"インペリアル・イースター・エッグ"。
"インペリアル・イースター・エッグ"をモチーフにした作品では、『ザ・エッグ 〜ロマノフの秘宝を狙え〜』(主演:モーガン・フリーマン、アントニオ・バンデラス)を見た記憶がありますが、それ以外では全然知りません。エッグの存在を認識するという意味でも、とても重要な作品だったなぁと思います。
本作では、51個目のエッグが見つかった!というIFストーリーを軸にして、帝政ロシア(ロマノフ王朝)の崩壊後、まことしやかに囁かれた「皇太子アレクセイと皇女マリア存命説」に引っ掛けて(偽マリアは結構な数登場しています。有名なのはアンナ・アンダーソンですかね)、怪僧ラス・プーチンとロマノフ王家との関係性を折り込みながら、さらに蘭にコナン=工藤新一と露呈するのでは!?という身内の問題まで絡んでくるという、要素盛りまくりな作品です。
にも関わらず、不思議なくらい綺麗にまとまっているのがすごいですね。

作劇自体は、非常にわかりやすい三幕構成となっております。
前編は怪盗キッドとの大阪での攻防&謎の提示。
中盤は豪華客船での殺人事件&登場人物や物語の背景説明。
後半は西洋風の古城での、お宝と殺人事件の謎解き(犯人との対決)からの、コナンの正体に思い至った蘭との対峙。

主軸の謎解きは良くできていますし、ロマノフの末裔という都市伝説的陰謀論も楽しめる絶妙なバランス。
それに付随するアドベンチャーは『ナショナル・トレジャー』系で面白いですね。
怪盗キッドの消息、服部平次や少年探偵団の友情などが散りばめられ、とても面白い。
蘭が「コナンは新一なのでは?」と考え、その正体を探る過程もいいですね。実際には本当に"あり得ない"考えながら、蘭なりのロジックに基づく証拠集めや観察が、必要最低限の描写だけで十分なほど描かれており(『名探偵コナン』の中で幾度も描かれた為、前提事項の共有が済んでいることも要因)、不思議な納得感と諦めを感じさせます。
そもそも、あれほど博識で行動力があり、妙にませた一面がある小学生(行方不明の幼馴染と誕生日が一緒で、彼の幼少期にそっくりな面影まで完備)となると、蘭ねーちゃんが疑いを抱くのも無理ない……のかな?

おそらく、本作が幼少期に初めて見たコナン映画で、その時からシリーズ中一番好きな映画という認識です。
改めて見ても実に楽しめる作品で、単なる思い出補正というわけではなかったかなと感じました。
ミステリー&アドベンチャーとして、子どもが楽しめる脚本を作る、製作陣に感謝。
個人的にはゲストヒロインの夏美さんが超好き!可愛いですなぁ、このキャラデザ。

そういえば、二幕目の豪華客船で、羽毛の枕が切り裂かれていたため、ある人物が犯人ではないと断定するシーンがあります。
これは、『刑事コロンボ』第29話『歌声の消えた海』の中で、「アレルギーの人がいるかもしれないから、病室では羽毛の枕は使わないんです」とコロンボが話すシーンがありますが、この話が元ネタなんですかね。
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