ヨーク

あなたの目になりたいのヨークのレビュー・感想・評価

あなたの目になりたい(1943年製作の映画)
3.6
先日感想文を書いた『とらんぷ譚』に続いてハシゴで二本目のギトリです。端的に感想を言うと、つまらなくはなかったけど個人的には『とらんぷ譚』の方が好き、いや、まぁ面白いっちゃ面白いんだけど褒め称えるほどのもんではないなという感じでしたね。
お話はもうめちゃくちゃ分かりやすいラブロマンスものなんだけど、何となくアイドル映画みたいだなぁとか思いながら観ていた。そしたら本作も上映後にトークイベントがあったんだけどね、それによると本作のヒロインはギトリの結婚したばかりの奥さんなのだというではないか。しかもギトリは恋多き男らしくて何人目か(詳しくは忘れた)の奥さんらしい。それであぁ! と膝を打ったね。つまり本作は俺の嫁ええやろ? という俺の嫁を観ろ映画なんですよ。俺の嫁を観ろ映画といえばまず一番最初に思い出されるのは『バイオハザード』ですよね。ご存知ポール・W・S・アンダーソンがその妻ミラ・ジョヴォヴィッチのかっちょええところを撮るためだけに作っていたのではないかという疑惑すらある(俺の中で)シリーズだ。まぁポール・W・S・アンダーソンとミラ・ジョヴォヴィッチが結婚したのは最初の『バイオハザード』から5~6年後だったと思うので最初からそういうつもりで撮っていたわけではないと思うのだが、でも途中からは俺の嫁の良さを世間に知らしめるということが主目的になっていただろう、多分。
この『あなたの目になりたい』もそういう風に観えたな、俺にとっては。お話はギトリの嫁がモデルをやってる友達と一緒にどっかの美術館の展示の内覧会的なのに行くところから始まる。その内覧会のパスを持ってなかったギトリの嫁は警備員に止められるのだがたまたまその場にいた彫刻家のギトリの目に留まり入れてもらえることに。そんで親子ほど年の離れた女性に惚れたギトリが自分のモデルになってくれと彼女に頼み、彼女も快諾するのだが、彫刻家ギトリは徐々に視力を失う病に罹っていて…というお話。
上記したように分かりやすいラブロマンスなのでその後の展開も何となく分かるであろう。特に『あなたの目になりたい』というタイトルが、いやそれネタバレすぎないか…? となってしまうほどに特に捻りのない展開を見せるのでその辺はまぁ良くも悪くも分かりやすさ優先だなっていう感じはする。しかし本作は80年前の映画なのだが細かいところを挙げると、これは現代に生きる我々基準で観たら結構きついなと思うところはあった。いや、今思い出したが作中でギトリの嫁の祖母もそういうことを言ってたからこれは当時でもキツかったのではないかと思われるのだが、それが何かというと彫刻家ギトリとギトリの嫁が親子ほど年が離れているのだがギトリ側からのアピールがネチネチしていてハッキリ言って気持ち悪いんですよ。二人が出会った内覧会でもギトリが電話番号を聞いた後に「後で電話するよ」と言ったそばから彼女の背後からヌルっと現れて「もしもし?」とかやるのはキャバ嬢相手に浮かれてるおっさんみたいで見てられなかった。根本的にヒロインは親子ほどの年の差があるギトリと恋に落ちていく対象として定められた存在として描かれるので、なんか二人が恋愛関係になるその瞬間のようなものが省かれてる感じがしたんですよね。要はヒロインの主体的にギトリに惚れたという説得力がなくて彼女の主体性を感じないんですよ。俺がアイドル映画みてぇだなと思ったのもそこだった。まぁ俺の嫁自慢をしたくなるほどに美しい女優さんではあったと思うし、アイドル映画として見るなら彼女が美しく魅力的に撮られているだけでオールOKというところなのだろが。
ただ、とはいえラブロマンスもののツボは抑えてあるし、トリュフォーが称賛したという灯火管制下の描写は確かに良かった。ベタではあるが中盤から後半にかけての展開もいい感じに効いていたと思う。当時のフランスの情勢と(視力的にも)先が見えない不安とかが絡んでいて当時の雰囲気は感じられるのではないだろうか。
まぁ、よくあるラブストーリーとしてはそこそこくらいって感じだったがそういう周囲のことを含めれば見所は結構ある映画なのではないだろうか。ちなみに20歳そこそこのお嬢さんが50過ぎのおじさんに惚れるとか寝ぼけた映画撮ってんなよ、と言いたいところもあったのだが、20代の頃から一回り以上年上の男とばかり付き合ってたおじさん好きな女友達もいたし、何よりもギトリとジュヌヴィエーヴが実際に結婚していたわけだからそこはまぁいいかと思いました。
ヨーク

ヨーク