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白夜のRのレビュー・感想・評価

白夜(1971年製作の映画)
4.8
ブレッソン監督の恋愛モノ! ということで、ホントに面白いのかよ、と疑惑しかなかったし、ブルーレイ高いし、見ることはあるまいと思ってたんやけど、たまたまビックリ廉価で入手できたので見てみたら、これが驚きの面白さ! まず、主人公ジャックは、街中を歩き回って美女を追いかけては、その美女との恋路を妄想し、それを巨大なテープレコーダーに録音して、自分で何度も聴いてるというキモすぎる青年。ほんで、その妄想をネタに絵を描いてる画家(志望)であり、我が予想では、その後オナニーしてます、きっと。そんな雰囲気の子。変なロン毛で地味なおっさんファッションのジャックは、ある夜パリの街を少し前かがみで歩いていると、ポンヌフ橋から身を投げようとしてる美女を発見。止めに行って、話を聴いてやると、一年前に一年後ここで会う約束をした恋する男が現れないってことで泣いているのでした。彼女の名はマルト。そんなジャックとマルトの、出会った夜を含めた4つの夜を軸に、恋愛悲喜劇が展開する。機械のような動作と棒読みのセリフ以外にほとんど感情表現がないというのは、他のブレッソンの作品とまったく変わらずで安心だったのだが、この演出メソッドが恋愛モノに適応された時に起こるケミストリーは、かなり予想外で、非常に興味深かった。まず、ジャック君の行動は、恋愛してる人ではなく完全にむっつりスケベのそれで、初めてマルトを抱きしめるとき、いきなり胸もみから入るのとか、おいおい先走りすぎやぞって感じやし、いろいろ書いてしまうと見てない人の楽しみを奪うことになるので控えるけど、カフェで二人で並んでるシーンとか、マジ笑わずにはいられなかったよね。盛りのついた猿ですわ。席を立つときアレが立ってないか思わず確認してもーたし笑 延々と妄想内恋愛を繰り広げてる男の痛々しさだな。自分のことばっかで相手こと考えてないっていう笑 反対にマルトは、女だからというのもあってか、比較的感情表現がセリフにもジェスチャーにも多めで、見てて分かってくるのは、この女はただ自分の衝動に突き動かされてるだけで、何も考えてないバカだということ。あれ、青年といっしょやん笑 見ててイラっとくるシーンもあるねんけど、よーわからんまま恋に落ちてしまった男と抱き合うシーンは、即物的演出であるからこその、ちょっと普通の映画ではお目にかかれない不思議なエロスが漂ってて、すばらしかった。あと、他のブレッソン映画と明らかに違うのは、音楽が本編中に何度も流れる点。パリの街でギターを中心に人々が歌ってるのが聞こえてくるって演出になってて、メロディが甘く、恋の陶酔を感じさせる。これがブレッソンの映像やテンポを実に柔らかな印象に変えていて、やっぱ音楽の力ってすごいなーと。ポンヌフの下を、遊覧船が通り過ぎるシーンなんて、思わず恋の悦びに恍惚…。ところが! 監督のブレッソンにしても、原作者のドストエフスキーにしても、そんな一筋縄なラブストーリーで終わるわけがないのです!!! と思いきや、意外と、まぁあるある、ってなところで終わります。ストーリーが面白いというよりは、こんな普通なラブストーリーを、ブレッソンテイストで料理したところがすごいと思うし、それがよくハマってて、とても面白かった! てか、マジでジャックの気持ち悪さおもろすぎたわー。マルトマルトマルトマルトマルトマルトマルトマルトマルトマルトって何度もテレコに吹き込んだテープをバスでかけるとことかおかしすぎ!!!
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