YYamada

プライマーのYYamadaのレビュー・感想・評価

プライマー(2004年製作の映画)
2.5
【タイム・パラドックス佳作選】

◆パラドックス発生の方法
〈タイム・トラベル〉
 →自主製作したタイムトラベル用のボックスの中で6時間経過すると、6時間前の世界にタイムトラベル。

〈見処〉
①『TENET』の原型?最新物理学に基づく、タイムトラベルの埋もれた佳作
・『プライマー』は、エンジニアの経歴を持つシェーン・カルースが監督・脚本・主演を務めた2004年製作のSF映画。日本未公開。
・本作は、タイムトラベルによって生じる現実とのパラドックス、タイムトラベルの“タブー”に触れてしまったふたりのエンジニアの戸惑いを描いている(eiga.comより)。
・製作費はわずか7,000ドル、興行収入84万ドルと超小規模作であるが、2004年度のサンダンス映画祭で審査員大賞を受賞。
・本作では、過去へタイムトラベルを可能とする「時間の逆行」論拠を物理学の法則「エントロピー」としている点に、クリストファー・ノーラン監督の『テネット』(2020)と類似性があり、再度注目を浴びている。

②ネタバレ不能、77分の「長編」映画
・本作は「タイムトラベル最難関」作品で有名な作品であるが、その最たる理由は、「ネタバレ出来るレベルまで、ストーリー」を理解し難いため。
・Adobe Premiereで編集された「77分」の自主製作作品であるが、結局は3度は鑑賞しないと理解が追い付かず、「240分の長編作品」と覚悟したほうが良いだろう。

③結び…本作の見処は?
○: 「時間をかけて過去に戻る」…『TENET』の15年前に、このアイディアにたどり着いていることに脱帽。
×: 本作が難解と云われているのは、タイムトラベルのタブー「分身」との遭遇に関するプロットにあるが、脚本の複雑さの前に、監督としての圧倒的な力量のなさが最要因。自分は一度目の鑑賞時には、タイムトラベルの行き先が「過去」か「未来」かさえ理解に窮した。ノーラン監督の低予算デビュー作『フォロウイング』と比較すると、本作における、鑑賞者に理解させようとする演出の放棄には腹立たしくも感じる。

④オススメの鑑賞方法
時間の節約のため、ネタバレ解説を見てから鑑賞することをオススメします。

とくに東北大学SF研さんのサイトが非常にわかりやすかったです。
https://w.atwiki.jp/tohokusf/pages/209.html


また、現在はなくなってしまった公式ページに記載されていたであろう「あらすじ」を以下に転載させていただきます。
(出典: 上記に同じ)

本編よりもあらすじのほうが詳しい作品は初めてかも







アメリカ、郊外の平凡な街。
エンジニアのアーロンは、さまざまな機材に溢れる自宅のガレージで友人のエイブたちとともに、オフタイムを利用しオリジナル製品の開発を行っていた。しかし、彼等の主力商品は大量注文の望めない代物で、ビジネスと呼ぶには程遠く、研究も次第に行き詰まっていった。
そんなとき、エイブは起死回生のアイデアを思いつく。超伝導を利用する事で重力を軽減させる装置。もし成功すればノーベル賞も夢ではないというものだ。大きな投資が見込める可能性もある。そんな“夢物語”の開発に仲間は反対するが、アーロンとエイブはこの研究をふたりだけで推し進める。
開発費の調達もままならない中、ダクトテープに覆われた“箱”型の装置を作り出す。この実験の過程で、ふたりは思いもよらない発見をするのだった。“箱”は一度起動するとバッテリーを外しても、自然に稼動し続けること。たまたま“箱”に混入したカビが、通常の数十倍の早さで培養されること。
そしてアーロンとエイブは、ある驚くべき結論に至る。“箱”の中は、時間の概念が変わる“ワームホール”なのだと。(焼豚注:本人たちは否定している)つまり、タイムトラベルが可能になるのだ。

アーロンは、人が入ることができる大きさの“箱”の開発をエイブに提案する。ふたりは“箱”の保管場所として、住宅地から離れた貸倉庫へ下見に向かう。しかし、エイブは車を、なぜか貸倉庫が望める空き地に止めた。そして、エイブに渡された双眼鏡でアーロンが見たものは、酸素ボンベを手に倉庫に入ろうとしているもうひとりのエイブの姿だったのだ!そう、既にエイブはタイムトラベルを経験し、未来から戻ってきたのである。ふたりが目にしているのは、タイムトラベル直前のエイブだった。

貸倉庫に設置された、タイムトラベルのためのふたつの“箱”。エイブに促され自らもタイムトラベルを体験するアーロン。ふたりは酸素ボンベを抱え6時間、“箱”の中で過ごす。6時間後、ふたりは“箱”に入った時点からさらに6時間前の世界へとタイムトラベルする。

未来を知るふたりは株価の情報を事前に仕入れ、過去に戻り、大金を手に入れる。アーロンとエイブは、すべての欲望を満たす力を手にしたかのようだった。
しかし、タイムトラベルには、絶対的に避けられない問題があったのだ。それは、分身(ダブル)の存在。タイムトラベルのタブーとされる“分身(ダブル)との遭遇”を避けるため、外界との接触を断ち、ホテルに身を潜める。だが、自らの欲望を実現するため、そして過去と現在との整合を得るために、倉庫とホテルの往復を繰り返す必要があった。その繰り返しの中で徐々にさまざまな矛盾が露呈し、アーロンとエイブの未来が歪み始める。
公園で話をするアーロンとエイブ。アーロンの耳から流れる、夥しい血。両腕が麻痺し、字が書けなくなるエイブ。ロバートのホームパーティに出かけ、レイチェルの元恋人と格闘するアーロン。自宅で食器を洗うアーロンとエイブ。どれが本来のアーロンとエイブで、どれが分身(ダブル)なのか?

そんな中、何回目かのタイムトラベルを実行するため、倉庫に向かうアーロンとエイブを尾行する不審な男の姿があった。その男は投資家グレンジャーに瓜二つだった。不信に思ったエイブがグレンジャーの自宅に電話をすると、受話器の向こうにはグレンジャー本人がいる。「グレンジャーがふたり存在する。グレンジャーもタイムトラベルを行っている。」そう直感するアーロンとエイブ。なぜ、グレンジャーもタイムトラベルが出来たのか?

“箱”は、ふたりだけの秘密のはずだった。それを知っている誰かがいるという事は、どちらかが裏切ったという事だ。アーロンなのかエイブなのか? それともどちらかの分身(ダブル)なのだろうか?
YYamada

YYamada