るるびっち

ツナグのるるびっちのレビュー・感想・評価

ツナグ(2012年製作の映画)
1.3
日テレ制作ということで、『24時間テレビ』と同じ偽善性を感じる。
障害者や、無謀なマラソンを頑張る姿で涙を売る。
感動ポルノと批判されているが、似た匂いを感じる。
「死んだ人と心と心を繋ぐ、どうでっか? 泣けましゃろ?」
と、言われているようで逆に涙が引く。
死者を感動に使う、霊感ポルノだ。
実際、もっと泣ける話は思い浮かばなかったのだろうか?
予想を超える、意外な死者の秘密や打ち明け話は全く無い。
最後の桐谷美玲も隠された驚くべき過去があったのだろうと期待したら、単なる家出少女だった。正気ですか!?(ケンコバ風)
どこで泣くの??
霊感感動ポルノなら、もっと泣かせて貰わないと困るんですけど。
脱ぎっぷりが足りないのじゃないかしら?

結局、話に何も裏がない。
良い人ばかりで、裏のある人間が居ない。
橋本愛にしても、自意識過剰な思春期の娘で可愛いものだ。
裏の無い善人ばかりが出て来る。丸でお人形さんだ。
『鉄腕アトム』にある名言。
「アトムは完全ではない。なぜなら悪い心を持たないからだ」
ここに出てくる死者は人形ばかりで、人間の凄まじさを持っていない。
人形の人生に興味はない、人間を描けよ。
一番裏があるのは、ちゃちな霊感ポルノで儲けようという制作陣だ。

そもそも生きている側が望む話を、死者にして貰っているに過ぎない。
「お前は本当は優しい子だよ」「私は後悔してないよ」
「道は凍ってなかったよ」(あなたの罪じゃない)
「一目ぼれ、あんなに幸せな時間はなかったよ」
全部、生きてる側が死者に言って欲しかった台詞なのだ!!
非常に都合がよい。
これってコミュニケ―ションになってる??
自問自答でしかない。
他者とツナグではなく、自分の中の期待とツナグだけではないか。
劇中で主人公も「死者が抱えた物語は、生きて残された者の為であって欲しい」と語っている。
だから本当の霊ではなく、生者の心の中にある理想化した死者を現出させたに過ぎないのだ。
生者にとって都合の良い死者なのだ。やはりお人形だ。
それって、死者の人権無視してない?
それって、話を解ってくれる人としか喋らない傲慢に繋がる。
オタクがオタクしか人脈つくらないみたいに、返ってくる答えが解っている相手としか話さないのだから、閉じられた輪だ。
つまりツナイでない。『ツナグ』っていうタイトルは嘘である。
まったく自分と考えが違うのが他者である。それは死んでも変わらない。
なのに、自分に都合の良い返事しかしない理想の死者と逢っても仕方ないだろう。自分が納得したいだけだ。生者のエゴに過ぎない。

それは自分を思いやってるだけで、死者を思いやっていない。一方的なコミュニケーションで、本当のコミュニケーションではない。利用してるだけ。
自分が気持ちよく生きたいから、ワザワザ死者を黄泉の国から連れ出してくる。身勝手な振る舞いだ。
自分が気持ちよくなりたいから、風俗を利用するのと変わらない。
やはり霊感ポルノなのだ。しかも無料だ。
ちゃんとサービス料をとった方が良い。霊はタダ働きじゃないか。
人権、いや霊権無視も甚だしい。
生者に利用されるだけなんて許せない、霊の働き方改革が必要だ。
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