大雨の中を妻は家事をしながら、息子2人と夫の帰りを待っている。車が到着し、玄関まで彼ら3人を迎えに行く妻を、夫は優しく抱擁する。この絵に描いたような幸せな家族を次の瞬間、悪夢が襲う。チャイムが鳴り、ドア・モニターを覗き込んだ夫のこめかみに銃弾が突き刺さるのである。いかにもタランティーノ好きなジョニー・トーらしい凶行の中で、瀕死の状態で病院のベッドに横たわる妻アイリーン（シルヴィー・テステュー）は、フランスから来た実の父親コステロ（ジョニー・アリディ）に対し、復讐を乞う。フランスでレストランをしている父親は、マカオに頼るべき親類も縁者もいない。地元警察のウォン刑事（マギー・シュウ）も明らかに及び腰で、彼らの心の傷に親身になって寄り添おうとはしない。娘婿を殺され、愛する2人の孫を殺された父親は、彼ら3人が楽しそうに写ったモノクローム写真の上から、フランス語で「復讐（Vengeance）」の文字を書き殴っていくのだった。そんな彼がホテルで思いがけなく別の殺し屋の殺しの現場に遭遇し、父親は彼らに復讐の代行をお願いしようと心に決める。

　ジョニー・トーの映画では、殺し屋もセキュリティも特殊部隊も、映画の中でスポットの当てられる組織はいつだってプロフェッショナルな集団である。今作におけるクワイ（アンソニー・ウォン）、チュウ（ラム・カートン）、フェイロク（ラム・シュ）の3人も、組織のボスであるファン（サイモン・ヤム）から殺しの依頼を受け、それを完璧に遂行する凄腕たちである。アイリーンの自宅を訪れたコステロたちは、事件の様子と犯人たちの特徴、使用された銃の種類を見極める。これは『ＭＡＤ探偵　７人の容疑者』でも描かれていたプロファイリングである。本来ならば刑事が行うべき緻密な作業を殺し屋が行い、事件の惨劇がフラッシュバックしてくる。その後、レストランでコックをする父親の粋な計らいにより、円卓に座り4人がパスタを食べるシーンはジョニー・トー十八番の友情の証を立てる名場面であろう。90年代の『ザ・ミッション　非情の掟』のように、父親は拳銃のバネを気にし、その姿から殺し屋たちはこのフランス人が只者ではないと悟るのである。アンソニー・ウォンが皿を投げた途端、一瞬で撃ち落とすフランス人の銃の腕は確かである。

　『ザ・ミッション　非情の掟』においては、組織の掟は絶対であり、ボスの言うことには絶対に逆らってはならなかった。だからこそ彼らは、組織のボスの妻と寝てしまった下っ端を泣く泣く香港の外に飛ばして、二度と戻らないと誓わせた。そこから香港返還を経て、イギリスから中国へと戻った香港の民衆の姿を反映するかのように、21世紀の『エグザイル／絆』では組織の掟にもボスの命令にも逆らった男たちは、友情の名の下に仁義を選んだ。今作においても彼らにとって一番大事なのは、組織のボスであるファン（サイモン・ヤム）の言葉ではなく、フランス人の父親コステロ（ジョニー・アリディ）との深い友情である。

面白かった。後半やや失速感はあるものの、よく出来ています。
とにかく復讐もの。それしかない。
記憶がないのに復讐の意味があるか？
関係ない！だってカッコいいもん（笑）
まぁ多くは語るまい（笑）

俺に何の用だ

彼は忘れても　俺は約束した



自転車を撃って動かすっていう激アツシーン等、聞いていた以上のカッコいい作品。
淡々と間延びするのかと思っていたらビシッと決まっててオモロイです。