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X-メンのbackpackerのレビュー・感想・評価

X-メン(2000年製作の映画)
4.0
◾︎X-MENシリーズ第1作

【作品情報】
公開日   :2000年10月7日(日本)
作品時間  :104分
監督    :ブライアン・シンガー
製作    :ローレン・シュラー・ドナー、ラルフ・ウィンター
製作総指揮 :リチャード・ドナー、スタン・リー
脚本    :デヴィッド・ヘイター
音楽    :マイケル・ケイメン
撮影    :トム・シーゲル
出演    :ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ハル・ベリー、ファムケ・ヤンセン、ジェームズ・マースデン、他

【作品概要】
現実の人種差別等の問題をミュータントに置き換えて、公民権運動等の流れの中で爆発的人気を誇った、マーヴェルコミックスの人気シリーズ『X-MEN』の映像化作品。
監督は自身もユダヤ系をルーツに持つ『ユージュアル・サスペクツ』でお馴染みブライアン・シンガー。
『スーパーマン』監督のリチャード・ドナーのプロダクションが製作しており、リチャード及び彼の妻ローレンも関与している。
この時、ローレンは20代のアシスタントを連れていたが、彼こそがあのケヴィン・ファイギ。学生時代ドナー・プロダクションのインターンをしていた彼は、卒業後ローレンのアシスタントとなっていた。

キャストには、イギリスが誇るシェイクスピア畑の名優パトリック・スチュワートとイアン・マッケランという大スターが脇を固め、えも言われぬ厚みがある画力が素晴らしい。
イアン・マッケランはゲイであることを古くから公言しており、彼が本作を代表するキャラクターであるマグニートーを演じていることも、非常に感慨深い。
にも関わらず、主役であるウルヴァリンを演じるのがヒュー・ジャックマンに決まったのは、撮影開始後のことだった。

【作品感想】
率直な感想としては、「あまり色褪せていない作品」だなと思いました。
というのも、本作鑑賞直前に、子どもの頃大好きだった『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(以下「F4」)を久しぶりに再鑑賞したところ、そのCGクオリティのお粗末さ(これは仕方ないところですが)や、内容の安っぽさ・軽さにしこたま驚愕したからです。美化された思い出の記憶は、砂上の楼閣のごとく脆く崩れ落ちていきました……。

そんなF4ショックの直後ながら、同じく幼少期に好きだった本作には、斯様な印象はありませんでした。
下記3つの要素等が、その理由だと考えています。
①あまりCGゴテゴテのシーンがない(=実写が多い)こと
②差別の問題とその対処法について、陰陽併せて描くこと
③スーパーヒーロー映画だからといって、子ども向けにしてない(それぞれの苦悩に対し、「解決しない・犠牲が伴う・手に入れ難い・救いがない」という、「世の中そんなに甘くない」を前面に押し出す)
特に③。これが個人的に良かったです。

①は、F4で感じたショックの源泉は、時代の進歩と技術革新の影響により、当時は最新の物でもじきに廃れ、古びれ、劣化した印象を受けることにあります。これは仕方がないことです。
ただ、本作は、CGが悪目立ちするようなシーンが少なく、昔ながらの手法のおかげで、逆に古臭さを感じさせない仕上がりになっているということだと思います。

②③については、そもそも原作が人種差別やマイノリティの味わった苦難の歴史を背景にしていることは有名な話。なので、原作にリスペクトがあるならば、それは描かれて当然です。
差別側からの圧力に、被差別側がどう立ち向かうのか。
平和的に?暴力的に?
長期的視野での改善?短期的視野での改善?
それら選択肢によって、今その時を生きる被差別側の人間は、どのように救われる?いかように苦しむ?
本作では、普遍的で解決が難しい問題に対し解を示すのではなく、問題提起に徹底していたように感じました。

現実に、これらの問題は根深く、一朝一夕にどうにかなるものではありません。それはフィクションでも然り。それぞれの視点、立場、経験、あらゆるものが重層的になっているため、簡単に解決できないのです。
普通のハッピーエンドを目指すなら、そんな問題には「完璧で非の打ち所がない解決策」という綺麗事で覆い隠してしまいがち。そんな暗部を、真正面から描く。でも、決して観客を突き放したり、絶望的にさせたり、小難しくはしない。なぜなら本作は、スーパーヒーロー映画なのだから。

アクション面の弱さ等で賛否両論あるとのことですが、今回の個人的にはかなり好みの作品だったことが、再鑑賞にて発見でき、とても幸運な映画体験となりました。
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