140字プロレス鶴見辰吾ジラ

E.T.の140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

E.T.(1982年製作の映画)
4.3
【スピルバーグ幼年期の終わり】

「未知との遭遇」で何もかも捨てて宇宙に旅立った主人公の幕引きを失敗だったと語るスピルバーグが、ジュブナイルファンタジーにてエリオット少年のラストシーンの表情に託したモノが大きい。

スピルバーグは「インディジョーンズ」や「ジュラシックパーク」、最近だと「レディプレーヤーワン」とエンタメ的に凄い!作品を撮りながらも「プラベートライアン」「シンドラーのリスト」「ミュンヘン」「リンカーン」と社会派映画も世に放つ紛うことなき天才作家だと思う。

本作は孤独な少年と正直キモい宇宙人との交流で、互いに孤独であるがゆえに、互いにキモがられたがゆえのシンパシーで繋がり、そして月夜をバックに自転車で飛び立つというファンタジー的な優美さを歴史に刻んだ。今では多くの作品で迷子の宇宙人をかくまってそして別れる作品は多くある。何かと本作は孤独な少年が宇宙人に連れていってもらえる機会よりも、ここに残るという選択をして強い眼差しで友人を見送る場面が「未知との遭遇」の対になって抜群にエモい。

スピルバーグ映画における父の不在と父の理想像と求めていたモノの大きさはいつでも見受けられるが、本作を撮ったことでの後のスピルバーグ世界が強固なモノになっていく過程が何より強く刺さり、何よりスピルバーグを偉大だと思わせるモノなのだと思う。エリオット少年よ、強くあれ!