マサキシンペイ

人狼 JIN-ROHのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

人狼 JIN-ROH(1999年製作の映画)
3.1
どう評価すべきか難しい作品。
セルアニメーション技術の最高到達地点と言われながらも、映画としては凡作。

雨の中をゆっくりと向かって来る電車や螺旋階段を登る人の、パースの狂いのない描写等、セルアニメーションでは極めて困難な表現が随所に観られる為にアニメーターからは絶賛されているが、実写映画からすれば簡単に撮影可能な全く印象に残らないシーンであり、かつその描写があまりにも完璧すぎて違和感がないために素人目ではその凄みに気付くことができない。

加えてアニメ表現が得意とするような、アクションや表情のデフォルメや色彩の華やかさはかなり抑制的で、なおさらこれをアニメーションとして作る必要性が分からない。

技術的に非凡であるからといって、作品が非凡なものになるとは限らない。この作品にアニメーターが興奮すること自体は理解できるが、悪い意味であまりにも玄人好みすぎる。

押井守脚本に特有のスノッブの効いた台詞回しと冷淡な演出は健在であるにせよ、ストーリーとしてはよくある切ないラブストーリーであり、どこをどう切り取っても地味な映画だ。
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