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空の大怪獣 ラドンのbackpackerのレビュー・感想・評価

空の大怪獣 ラドン(1956年製作の映画)
4.0
『午前10時の映画祭 12』にて4K鑑賞

【作品情報】
公開日  :1956年12月26日
作品時間 :82分
撮影   :スタンダード(カラー)
監督   :本多猪四郎
製作   :田中友幸
原作   :黒沼健
脚本   :村田武雄、木村武
音楽   :伊福部昭
特技監督 :円谷英二、渡辺明(特美)
出演   :佐原健二、白川由美、平田昭彦、田島義文、ほか

【作品概要】
1954年『ゴジラ』後、東宝特撮に再び現れた、ゴジラサイズの大怪獣。東宝怪獣映画では初のカラー作品である。
田中友幸プロデューサーの発想、すなわち「ゴジラの再来的な考え方」「今度は空を飛ぶものにしようじゃないか」をベースに企画された。

福岡出身の当時特美の美術助手だった井上康幸が手腕を振るい、超緻密かつ正確な西鉄福岡駅周辺のミニチュアセットを作成。
本物同然のリアリティあるミニチュアを作るために、白黒に塗り分けた棒を片手に博多の街を歩き回り、寸分違わぬセットを作り上げることに注力した。
特撮に注ぎ込まれた金額は、予算の60%を占めている。

【作品感想】
1954年に『ゴジラ』で大ヒットを飛ばした田中友幸プロデューサーが、『ゴジラの逆襲』『透明人間』『獣人雪男』に続けて製作した、東宝特撮怪獣映画の金字塔。
『午前10時の映画祭12』にて、4Kデジタルリマスター版が上映されましたので、年末に鑑賞してきましたが……やっぱり最高ですね、ラドンは!
核実験がもたらした気候変動により、太古からの長い眠りから孵化することになったという、ゴジラに通ずる背景があります。地球温暖化との言葉も出るため、非常に現代的なテーマ性も持っていたり。

前半の「人間を容易く殺す巨大なヤゴ=メガヌロン」を、孵化したてのラドンがヒョイパクヒョイパク食っていくところは、「デカい!」し「強い!」と一目でわかる、怪獣として実に素晴らしい存在感。

なんと言っても最高なのは、ラドンという存在の死に様。
愚かな人間による環境破壊の結果叩き起こされて。ちょっと大空飛ぼうかな〜と表に出たら、ちっこい金属の塊に追い回され。世界中の空でも同じような奴が飛んでる始末。
大空はお前らのもんじゃねーっての!とばかりに、ただ飛んでるだけなのに次々落ちていく飛行機なんて、ラドンにとっちゃイイ迷惑だったでしょうに。
追い回された後で降り立った地面でも散々攻撃されるし、ツガイと帰ってきた家までミサイル攻撃に晒されるし。
挙げ句の果てには、棲家の山を噴火させられ、二匹で溶岩の中折り重なって死ぬなんて……。
この荘厳な死にっぷり。悲劇性。泣ける。

東宝特撮怪獣映画はピン作品に好みの作品が多いのですが、『ゴジラ』に次いで好きな作品が『ラドン』です。2023年年明け早々に漸く見れた『獣人雪男』も同様の構造で、案の定好きな作品でした。
然るに、自分は、「人間に苦しめられ最後には死んでいく」という怪獣の運命構造そのものが好きなのかもしれませんね。
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