R

バタリアンのRのレビュー・感想・評価

バタリアン(1985年製作の映画)
3.9
幼少期以来はじめて見てみた! 安心して笑って見れるB級ホラーコメディかと思いきや、なかなかディープな恐怖要素を含んでてとても陰鬱な気分にもなれちゃうという一石二鳥な作品。まず、注意せねばならぬのが、本作が実話ベースであるという点。しかもナイトオブザリビングデッドの直接的な続編となっており、ナイトオブザリビングデッドも本当にあったお話を映画化していると冒頭で語られる。世の中には恐ろしいことが起こるものである。何のためか分からぬが米軍が開発した、死者をゾンビ化するケミカルガスが、よく起こりがちな手違いにより、販売用の死体の在庫管理所に送られてしまい、ちゃんと報告せずに秘密裏に管理所の地下に隠してあるのでした。そのことを知ってた当直の社員二人は、地下に降りていって、軽い気持ちで巨大なボンベをいじってたら、何と!ガスを空気中に解放してしまい、死者がゾンビになって続々と人間に襲いかかる!!! というお話。のちにゾンビのひとり、半身死体のオバンバの語りによって明らかになるのは、ゾンビは人を襲っているのではなく、あくまで脳みそを食べたいだけなのだという。それはなぜか。これがかなり重要なポイントである。何と、死後、死者に起こる全てのプロセス、すなわち死後硬直から腐敗を経て土に帰るまでのプロセスにおいて、死者たちは実は言語を絶する苦痛を経験しながら阿鼻叫喚しており、生きた人間の脳みそを喰らうことによってのみその苦痛を和らげることができるのだ。つまり、そのガスは、いわゆるあの世(地獄?)にて激しい痛みに苦しんでいる死者たちの意識を、元の体に戻す効果があるということらしいのだ。なので、本作のゾンビは皆、ひどい唸り声、叫び声をあげており、動きは普通の人間と変わらず敏捷、力も同じくらい、普通に人間が本気の全力で襲いかかって来る感じなのです。全体としての演出は軽いコメディーノリなのだが、死後の苦痛と叫喚という設定は非常におそろしいものであり、ゾンビとゾンビ化しつつある人間にとってはまったく笑えない切実さがある。笑えるのはゾンビに襲われるハードロックな不良たちの慌てふためきぶり。こちらの期待を遥かに超える演者さんたちのオーバーアクトは見応え抜群。特にケイシー演じるジュエルシェパードが、取り乱して両手をGod!て感じで前に出す姿は爆笑やし、トラッシュという女が藪から棒に墓地でストリップショーし始めるシーンのインパクトは忘れがたい。可能な限りこういうノリで生きていきたいものである。そして、問題解決がどんどん不可能な方へ展開していく絶望感をワクワク見守りながら、一体どんなオチがつくのであろうか、と思ってると、世にも皮肉なエンディングが……人類に降りかかる最も深刻かつ致命的な問題は、人間の手によって引き起こされる。その象徴が立ち昇り、降り注ぐ、衝撃のエンディング!!!
R

R