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亀は意外と速く泳ぐのkomoのレビュー・感想・評価

亀は意外と速く泳ぐ(2005年製作の映画)
4.1
平凡な主婦のスズメ(上野樹里)は、単身赴任中の夫から亀の世話を頼まれている以外にはこれといった日課がない。
キャラが濃すぎる幼なじみの孔雀(蒼井優)に振り回されながら、自分の”薄さ”に虚しさを感じていた矢先、街中にひっそりと貼られている『スパイ募集』の広告を見つける。
応募して訪問した先には、平凡な見た目のスパイ夫婦・シズオ(岩松了)とエツコ(ふせえり)がいた。早速ミッションを与えられるのだが、それは危険な任務などではなく、『スパイであることがバレないよう、とことん目立たない生活をすること』で……?


『脱力系映画』のコピーにふさわしい、最初から最後までユルユルなコメディ。極端に印象に残るような笑いはないけど、本編中一度も笑うなと言われたら難しい、クスッと来てしまうネタが満載です。シュール系の笑いが好きな自分は始終ツボってしまいました。

主人公のスズメは絵に描いたような平凡な主婦であり本人もそれを自覚しているけれど、『平凡に過ごせ!』と命令された途端に、”平凡”や”普通”の基準に悩むようになります。
布団を干す時、表から干すのと裏から干すのはどちらが一般的?
スーパーでの買い物って、どんなものをどのくらい買うのが平均的?
何も褒められるようなことはしていなくても、人間って日々の生活の中で思ったより多くのことを自ら考え、実行しているんだなぁ〜とユルユル思いました。

なるべく平凡であろうと奮闘するスズメですが、何かと絡まれる友人の孔雀が派手すぎるせいで、一緒にいると自ずと目立ってしまいます(スーパーで真っ先にアーティチョークをカゴに入れたり、くじ引き大会で地引き網漁体験の招待券を当てちゃうところには笑ったw)

そもそもスズメが自身の薄さに悩み始めたのは、幼なじみの孔雀にあらゆる面で敵わなかったことが原因です。(スズメは漢字で書くと『雀』で、この時点で孔雀に勝てない運命が物語られている)
しかし劣等感と言ってもバチバチと火花を散らすほど恨んでいるわけでもなく、この二人の関係もユルユルの惰性的な付き合いという感じで、観ている側としてはのほほんとしてしまうのです。
コメンタリーでは三木監督が「上野樹里さんの実直さと、蒼井優さんの晴れがましさの相性が良い」と語っていて、その通りだと思いました。

あとは今まで冴えない人たちだと思っていた商店街の面々も実は諜報部員であったことが次々と判明したり(商店街の団結モノ大好き!ラーメン屋の松重豊さんかっこよすぎ)、ひょんなことから公安警察が動き出したり、最終的にスパイとしての本物の召集がかかったりするのですが、しかしどのシーンも一貫して脱力しています。

何も考えたくないような時にもさらっとみられて、心をプチ洗濯できる映画。
笑いのベクトルは人を選ぶかもしれませんが、こういうジャンルがあっても良いなぁと思いました☺️
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