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レイニーデイ・イン・ニューヨークのkomoのレビュー・感想・評価

4.1
ギャッツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)は恋人同士。記者を目指すアシュレーが有名な映画監督に直接インタビューするチャンスをもぎ取ったのをきっかけに、2人は取材を兼ねてニューヨークで過ごす計画を立てる。
しかし到着したニューヨークは最悪な天候で、更にはアシュレーの取材が長引いたことなどから、2人の計画は崩れていく。


【移り気は水に流せない】

梅雨まっさかりの時期に鑑賞。
連日悩まされた鬱蒼として厄介な雨も、ウディ・アレンの映像の中では美しいものとして見えてしまうのが不思議です。
ウディ・アレンに関する噂は多々あり、それが真実であるならその人間性を全て賞賛することはできませんが、それでもやはり彼の創る作品は一級品です。クリエイターの人間性とは切り離したところで作品は引き続き楽しみたいと思います。

『君の名前で僕を呼んで』の頃から比べるといくらかイカつくなってきたシャラメくんですが、今回も美しかった💕
『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』に続き、ちょっと情けない男性像が似合う、憎めない演技をしてくれます。
ヒロインを演じるエル・ファニングは相変わらず完璧な可愛らしさですが、著名人に囲まれた中で垣間見える田舎くささの表現も素晴らしかったです。

順風満帆に見えた美しいカップルがニューヨークの雨に惑わされ、恋人以外の相手に心が移ろいでしまう皮肉をコミカルに描いたストーリー。
スターに愛を囁かれてコロッと行ってしまうアシュレーの若さがリアルです。
対するセレーナ・ゴメスはミーハー要素無さそうなキャラクターで、対照性がGoodでした。

アシュレーに遠ざけられたギャッツビーも反骨精神で他の女の子とキスしたりしますが、それでもアシュレーのことばかり考えてしまう。アシュレーアシュレーアシュレー……となってるギャッツビーはだいぶ女々しいですが、テンポの良い展開のおかげもあり、鬱陶しい男というより喜劇の登場人物のように思えます。
ピアノの弾き語りが非常に良かったです🎹

ラストシーンのギャッツビーの決断に一役買っているのは、彼の母親とのエピソードだと思います。
後半、母から自分の過去を語るシーンで、ギャッツビーはこれまでの人生で『自分の母親はこういう人間』と信じ込んでいた像を打ち砕かれます。
ショッキングな内容ではあれど、それは必ずしもマイナスのイメージ変化ではなく。
母の人生にも、重苦しい雨が降り続けていた時期があった。濁りのある人生だった。それを知れたことで、優柔不断なギャッツビーの性格に一筋の光が差し込みました。

それとギャッツビーのお兄さんの悩みも面白い。他の人間からすれば『そんなことで?』と思うだろうけど、配偶者の癖が生活に与える影響というのは確かに死活問題です。私はお嫁さんのあの笑い方は可愛いと思います(笑)

この映画の良いところは、お互いの心に一瞬だけ差し込んだ移り気を水に流してめでたしめでたし、にしないところ。
コミカルながら人生をシビアに表した一作でした。
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