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クルエラのkomoのレビュー・感想・評価

クルエラ(2021年製作の映画)
4.4
【アイデンティティの塊】

『101匹わんちゃん』の人気ヴィラン・クルエラがなぜ悪の権化となったのかが描かれるオリジナルストーリー。
エマ・ストーンが演じると知った時からとても楽しみにしていました!
クルエラと言えば、ファッショナブルな風貌と露悪的な言動が魅力的なヴィランです。
101匹わんちゃんの中で描かれた『自らの美しさのために犬を殺してその毛皮を着たい』という彼女の願望は、まともな感覚で行けば『そんなことのために⁉︎』という感じですが、その”そんなこと”に価値を見出すようになるまでのサクセスストーリーとして、本作は非常に説得力のあるものでした。

クルエラはかつて【エステラ】という名で、母親に愛を注がれて育ったいたいけな少女でした。
やがて彼女が自ら名乗り始めた【クルエラ】というのは”残忍”という意味の言葉です。
母親から「あなたはエステラよ。クルエラにはならないでね」と言い聞かされて育ったにも関わらず、母への愛ゆえにクルエラと名乗るというその行動は、彼女のアイデンティティ表現の最たる例です。
そう、クルエラというヴィランが非常に魅力的なのは、彼女の中に確固たる独自のアイデンティティがあるから。
母を愛している。けれど母に言われたやり方ではなく、私のやり方で母を愛し続ける。
それが本作のクルエラの原動力でした。

前半は、しがないコソドロであった彼女がファッションデザイナーになる夢を繋いでゆくシンデレラストーリー。
後半はデザイナーさながらの才能をふんだんに使いながらある人物を計算高く陥れてゆく復讐劇となっていて、同じ映画と思えないほどの振り幅が面白かったです。

原作では犬の毛皮を狙っていたクルエラですが、元来の彼女は動物嫌いではありません。
犬好きの人にこそ見て欲しい、人間と犬の関係性が痛快に描かれている作品でもあります。

エマ・ストーンのハスキーな声も聴きたかったけど、一緒に行った夫が吹替を希望したので吹替で鑑賞。
柴咲コウさんの気だるげな語り口、想像以上にマッチしていました。

ゲリラファッションショーという言葉の語感が強すぎてマイブームです。
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