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情婦のkomoのレビュー・感想・評価

情婦(1957年製作の映画)
4.5
病床から回復した老弁護士のウィルフリッド(チャールズ・ロートン)は、退院後まもなくレナード(タイロン・パワー)という男の弁護を引き受ける。
レナードは懇意にしていた未亡人女性を殺した罪に問われていた。アリバイを証明できるのは妻であるクリスチーネ(マレーネ・ディートリッヒ)のみだが、彼女の態度は冷徹であり、レナードへの愛情が感じられない。
クリスチーネに証言させることを諦め裁判に臨むウィルフリット。しかし検察側が用意した意外な証人により、弁護は苦戦を強いられる。


【老いては情に従え】

ビリー・ワイルダーには”洒落た映像を撮る監督”というイメージがありましたが、本作では特に監督の美のエッセンスが端々に感じられました。
法廷ものということで小難しいかと思いきや、不条理的なシナリオをユーモアで彩った作品でした。
病人であるウィルフリットと彼を嗜める看護婦の会話は皮肉に溢れつつも人間愛を感じるものですし、文句ばかり言っている老人がユニークなエレベーターで運ばれる映像は滑稽で可愛らしさすら感じます。
裁判にかけられるレナードの慌てふためく様子も、深刻すぎることなく見ていて楽しめるものとして描かれていました。

序盤で登場人物たちの頼りなさが描かれているからこそ、ウィルフリットの法廷での手腕や、クリスチーネの冷酷さ、そしてラストシーンでの人間の業の深さがしっかりと浮き彫りになっています。

ラストの数分ですべてがひっくり返る大どんでん返しのシナリオの素晴らしさはもちろんのこと、
ウィルフリットの仕事に対する価値観を描ききって終わるところも魅力的です。
人間らしく情に流されることもあるウィルフリットですが、それを含めた上での”仕事への矜持”なのだなと思いました。
最初から最後まで、面白い映画体験ができました!

タイトルは原作の『検察側の証人』がシンプルにして的確なので、元のままが良かったです。
というか、ジャケットとタイトルで損してる気がする…😂
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