B5版

灰とダイヤモンドのB5版のレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
3.8
愛も場も大義も栄光も、
幾多飛び交う矢印はどことも交わらない。

反体制派として先鋒をつとめる若者の前に運命の女が現れて、ともにした一夜。
この先の未来について明るい希望を抱いたその心の内には既に犯した罪の重みが生まれることになり、そうして男には段々と逡巡がつきまとい…

主人公マーチェクについて、
序盤はジェームス・ディーンや尾崎豊のような向こう水で暴力的なくせに傷つきやすい若者像を感じてしまい共感が難しかった。
しかし過去に起きた「ワルシャワ蜂起」と言う悲惨な出来事をなぞると彼の危うい言動は、単なる軽薄な反抗心の産物ではないとわかる。
仲間の死を目にした後、生に執着する理由が見当たらずにせめて大義のために散ることでしか人生を説明できない。当時のポーランドに生まれた若者の行き場の無さが現れている。
この抵抗三部作は、どの立場を切り取っても辛い…としか言えない…

逆さ吊りのキリストなど、強烈で象徴的なシーンが多く印象的な作品であった。
でも三部通して「地下水道」が一番好きかも。
B5版

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