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灰とダイヤモンドのKKMXのレビュー・感想・評価

灰とダイヤモンド(1957年製作の映画)
4.1
背景を知らないとなかなか難しい作品ですが、観応えのある映画でした。

ポーランドは18世紀のころから列強に分割統治をされていたり、かなり長い間周囲に翻弄されていた印象を抱いていました。本作を観たときも、詳しい歴史はわからないものの、ナチスとソ連の間で引き裂かれているのだろうというのは容易に想像できました。
引き裂かれる国家や内戦の物語は、普通の戦争映画(って表現もヘンですが)よりも複雑な気持ちになります。マチェクもシチューカも、翻弄された結果、現在の立ち位置にいるだけに思えます。シチューカに至っては、息子が父親に反旗を翻してますからね。反抗期とかそんなんじゃなく、父親の命を狙っているという引き裂かれっぷり…ムム〜。

マチェクの変化は、そりゃそうだろうなと感じます。レジスタンスとして戦って来たのに、戦争が終わったらテロリストになるなんてバカバカしすぎる。もちろん、渦中にあれば死んでいった仲間のためにテロに身を投じるしか考えられませんが、恋を知ってしまえば、意味ある人生を生きたくなるはず。
マチェクの変化の舞台が廃墟となった教会というのも皮肉っぽい。ベルイマンじゃないですが、神の愛など届かない無情の世界に生かされていることが伝わります。その直後に、マチェクが殺した罪なき2人の遺体と対面し、マチェクは後戻りできないこと突きつけられます。ムムム〜。

その他の登場人物も、なかなか苦しい。エンディング前、明け方の貴族たちが終戦を祝うダンスシーンは、偽りの喜び感が炸裂しまくりで、虚無すぎてキツい!音のあっていない曲に合わせてダンスする彼らは全員無表情。対立している共産・反共の国民だけではなく、誰もが虚しく、未来が見えない。その直後、ホテルの支配人がポーランドの旗を掲げようとするが、たなびくことはない。これも悲しい!
二重スパイみたいな市長の秘書もキツかった。偽って生きるとどこかで暴発しますね。かといって正直に生きると当時のポーランドでは人生を全うできなさそうです。なんという地獄…ムムムム〜。


ホントやり切れない映画でした。鑑賞後、より詳しく本作の背景を知りたく思いググったところ、YouTubeの午前十時の映画祭公式チャンネルにて町山智浩の解説を発見しました。観る前編・観た後編に別れており、当時の背景や本作の詳細な考察が語られております。
この前編を観たところ、当時のポーランドの状況が想像以上に壮絶で、こりゃ国が引き裂かれるわ、と心から腑に落ちました。ワルシャワ蜂起とか、マジかって感じですね。ムムムムム〜。

もし、これから本作を鑑賞するのであれば、映画祭公式チャンネルの町山解説前編をチェックしてから観ると、かなりググッと入り込めると思います。せっかくの作品なので、背景知ってから観た方が絶対に良いと確信しています。
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