140字プロレス鶴見辰吾ジラ

フィッシュストーリーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

フィッシュストーリー(2009年製作の映画)
4.0
チープでホットなクライマックス

人っ子ひとりいない商店街
たとえ駐輪してある自転車をドミノ倒しにしてもその光景は虚しく響くだけ
そこを行くは電動車椅子に乗り虚ろな表情の男
彗星衝突による人類滅亡まで残り5時間
人々は迫り来る大津波から逃れるために山に登っていた
ただ一箇所だけ、とあるレコード屋だけは1人の店長と1人の客を残して営業を続けていた

ここから始まる地球を救う物語

最初は逆鱗という売れないパンクバンドの物語。ビートルズが解散しROCKは滅亡の危機?セックスピストルズもまだ生まれぬ世のパンクバンドは自分たちの音楽が世間に届かないことに嘆いていた

次は冴えない大学生。ドラえもんののび太のような彼はジャイアン、スネ夫モチーフの仲間とともに呪いのレコードの話を車中で行う。濱田岳のひ弱な演技が光り、勇気を出せ!と観客の焦燥感を駆り立てる。

次は居眠りをして修学旅行メンバーと逸れ船で苫小牧に行く羽目になってしまった少女と親からヒーローになれと訓練の日々を送らされた青年料理人の話。この船がシージャックされようとは…

そしてそれを一本の道としてつなぐ「フィッシュストーリー」という本にまつわるエピソード。

それぞれ関連のなさそうな話がひとつの力となり地球を救う絵空事のようなファンタジー。

邦画的なチープ感、タイムリミット演出に乏しい緊張感のなさ、ゆったり構えるメインのパンクバンドの話。地球が救われるのか?と疑ってやまない中、クライマックスのパンクバンドのやりきった顔の演奏からすべてをつなぐぷよぷよ大連鎖が始まる。

連鎖反応型のクライマックスは「プリディスティネーション」が記憶に新しいがそれほどシリアスなわけでなく、謎が解けたときに押し寄せる感情もキャラのとあるチープなギミックの投入なので呆気にとられ逆に笑みがこぼれてしまった。

音楽が世界を救うといかにも向こう見ずな野望がのらりくらりと叶う様についついハニカム結末へと導くわけである。

大傑作‼︎という余韻は全くないが、イイモノ見たと何かまだやれそうだという気持ちにはしてくれる作品。
オムニバス的な手法と物語を散らばらせてはいるが各エピソードの関連性が薄く、それでいてシリアス過ぎず、チープながら軽快なアクションすら堪能できるので集中力は比較的維持したままクライマックスまで120分弱の物語と付き合えるだろう。