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美女と液体人間のbackpackerのレビュー・感想・評価

美女と液体人間(1958年製作の映画)
4.0
【作品情報】
公開日  :1958年6月24日
作品時間 :95分
撮影   :東宝スコープ(カラー)
監督   :本多猪四郎
製作   :田中友幸
原作   :海上日出男
脚本   :木村武
音楽   :佐藤勝
特技監督 :円谷英二
特殊技術 :荒木秀三郎・有川貞昌(特撮)、渡辺明(特美)
出演   : 白川由美、佐原健二、平田昭彦、佐藤允、小沢栄太郎、千田是也、ほか

【あらすじ】
雨の夜、一人の男が消失した。男の名は三崎。とあるギャング組織の一員だ。
警察は事件性を確信し、富永刑事(演:平田昭彦)率いる捜査チームを動員し、三崎の行方を探るべく、三崎の情婦・新井千加子(演:白川由美)を監視していた。
或る晩、捜査チームは千加子に接触してきた男を捕らえた。実は、男は富永刑事の友人で、生物化学教授の政田(演:佐原健二)であった。
佐原のもたらした情報は、富永達からすれば荒唐無稽極まるもので、信用に値しない。しかし、連続して起きる人間の消失事件を論理的に説明するには、もっともらしいのもまた事実。その情報とは即ち、大量の放射性物質を浴びた人間の肉体が変質・液体化し、恐ろしい”液体人間”になるというもので……。


【作品概要】
東宝変身人間シリーズの第1作。3作品における長兄ポジション。次男が『電送人間』、三男が『ガス人間第一号』である。親は『透明人間』であり、養子(場合によっては四男)に『マタンゴ』がいる。
怪奇空想科学映画シリーズとして3作目以降の企画も立案されていたが、映像化はされていない。

第五福竜丸がビキニ環礁水爆実験にて被ばくした事故を取り入れた、放射能汚染による生物の変貌の恐怖を下敷きに、SF・サスペンス・ロマンスの要素を掛け合わせた、変化球刑事物映画である。

原作者の海上日出男は、東宝作品の端役俳優であったが、本多猪四郎監督の『地球防衛軍』にてミステリアン幹部を演じていた際に着想、『液体人間現る』を執筆し、本作の原作となったが、映画化決定後心臓まひで死去している。

【作品感想】
大都会の闇を蠢き、人間を液体にして殺すという恐怖の化け物”液体人間”。このアイデア一本を面白くしていくのは、まさに制作陣の腕の見せ所。その点を踏まえると、やはり本多猪四郎監督は特撮映画作りの名手といえます。
今回調べて驚いたのは、特殊撮影の荒井秀三郎が、円谷英二の義弟(円谷の妻は荒井の姉)だったということ。モノづくりの世界って、関係性が濃いなぁ。

ガマガエルが融解したり、ゲル状の物質が意思を持つかのように動いたりと、特撮シーンはどれもさすがの出来栄え。
最初は微塵も信じていなかった液体人間の存在を、警察側が徐々に信じはじめ、遂には犠牲者を伴う直接遭遇にて完全に理解し、科学者達と連携し、組織一丸となって大規模掃討作戦へと至る展開は、ガソリンが火の海となって全てを焼き尽くす様も相まって、丁度いいカタルシスがあります。とはいえ、一面の火の海がスクリーン一面に映し出されるラストシーンは、直接的すぎてビビりまくり。人類の原子力利用に対する警鐘ではありますが、とんでもない終わり方ですね。

なお、本多猪四郎監督お馴染みの、住民が行李や風呂敷を担いで逃げる迫力の群衆シーンは本作でも炸裂。ビルや建物が立ち並ぶ通りを俯瞰して、消防車や機動隊と共に人波となって動く姿は、さすが本多監督ですね。
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