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金融腐蝕列島 〔呪縛〕のクレセントのレビュー・感想・評価

金融腐蝕列島 〔呪縛〕(1999年製作の映画)
4.0
原田真人の作品としては、クライマーズ・ハイと並んで好きな映画である。
クライマーズの方は新聞社、こちらは銀行である。ともに企業の中核である若手と経営層との激しいぶつかり合いや戦略がらみの抗争をテーマに、俳優たちが論戦を繰り広げる。それはまるで、ハリウッド作品のようで、こういったシーンを得意とする原田は、長い間ロスアンゼルスで修行したらしい。クライマーズでの編集会議などのシーンはまさに、ワシントン・ポストやボストン・グローブなどのハリウッド作品を彷彿させる。実際の日本ではありえないのだが、映画としては非常に面白い。

今では総会屋は姿を消したが、銀行は依然として裏組織との関係を断ち切れない。今でさえ組員の口座を閉鎖することが困難であると報じているのだ。原田はそういった意味で現代の社会通念をエンターテイメントに変えることに長けている。

原田の根底にあるものは’正義’であり、'使命’である。今の若者文化から立ち消えたような正義感や使命感といったものを、映画を通して訴えていると強く感じた。こういった風潮は定着して欲しいが、最近の彼の作品は少し間延びをしている。初期作品のような緊迫感に欠けるきらいがあるのが残念である。
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