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ストレンジャー・ザン・パラダイスのRのレビュー・感想・評価

5.0
10年ぶりくらいに5回目見たんやけど、やっぱこれめちゃくちゃ面白い! こんなに鮮やかに人生の退屈を描いた作品はないんじゃないのか。あったら教えて! 全編クールな白黒の映像に、キザな編集のタイミング、アンニュイな音楽、スタイリッシュなファッション、などなどを盛り込んだオフビートなコメディ。これをオシャレと言わずして何をシャレてるとするのです?ってくらいイカした雰囲気なんやけど、出てくる人物はみんな頭悪くて、ボケてて、おかしくて、とてもキュート。NYに住んでるハンガリー出身のウィリーのとこに、ブダペストからいとこのエヴァが暮らしに来るから、とりあえず10日間預かって面倒見てやってくれと、クリーブランドのロッテおばさんから連絡が入る。で、実際預かったるねんけど、ウィリーは特に何もせずダラダラ暮らしてるだけやから、エヴァも一緒にそうするしかない。エディというすっとぼけきったウィリーの友だちは、エヴァを気に入ったようで、ちょっとだけカラもうとするのがカワイらしい。けど結局ウィリーに誘われて野郎2人で競馬に行くのみ。で、大して何もせぬまま、クリーブランドの叔母のとこにエヴァが去っていく。すると何だかちょっと手持ち無沙汰で寂しくなった感じのウィリーは、エディを連れてクリーブランドに赴くのだが…って話。ほんでクリーブランドのあとも、パラダイスを求めて3人でフロリダにまで行ったりするのだけど、オモロイのは、この人たち、どこいってもやってることが全く同じ。テレビ見て、トランプやって、競馬して、とそんくらい笑 やからどこ行っても心から楽しい!って思えることがないねんな。こんなバカたれたちのノンビリした映画を見ながら、そういう映画じゃないのは承知の上で、敢えて彼らの退屈の根本的原因を掘り下げてみると、彼らには、まったくもって生きてる目的というものがない。それを象徴するかのような、真っ白の湖を見つめる3人の後姿がとても印象的。やから、気候のいいフロリダに行っても何もないのは当たり前。で、共通の目的なくいっしょにいる人たちは、遅かれ早かれバラバラになるしかないのであります。って考えると、この3人、まさにほとんどすべての現代人のメタファーになってる。皆さん、一生を賭けた共通の目的とかないから、ひとつひとつ役割が終わったら、例えば卒業、退職、子育て終了、などを経たら、皆さんバラけるしかないよね。しかも、たとえば人生の大部分を仕事に投じてるとしても、その間やるべきことは得られるが、それが心からおもしろいってわけでもない。工場とかで働くならなおさら。最後は結局会社にポイっと捨てられる。そんな無為な生活の中に、金銭の問題が絡んできたりしたときには、せめて何となくはあったんじゃないの?くらいはあった人間関係すら帳消しになってしまう。何という呆気なさ。そんな人生のひとつの実相を、こんな粋にサラッと描いてしまうんやから、ジャームュシュって意地悪なやつだなーとも思うし、すごい監督やなーとも思う。3人とも、おばさんも、みんな気のいい奴らなのに…げにもったいなや。目的って大切だねー。これは確実にジャームュシュの最高傑作のひとつっすね。すばらしい。ワニを窒息させる、面白かった、見たまんま笑 今後使います。また見ます。
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