映画大好きそーやさん

バッファロー’66の映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

バッファロー’66(1998年製作の映画)
3.9
世界一不器用で、世界一優しい男の、環境に左右され続けた人生。
ビリーの狂暴性、狂気性が前に出過ぎるあまり、共感できない主人公として受け入れた人も多かったように思います。
私も最初こそそのように受け取りそうになったのですが、物語が進むにつれてどうやらそれだけで片付けられるような人物ではないことが明らかになっていき、最終的にはレイラと共に、ビリーに誰よりも感情移入してしまう状態にまでなっていました。
私もよく自分を表に出すことに失敗して、勘違いされることが多く、ビリーとまではいかないまでも生きづらさを感じつつ生活しています。
関係を続ける中で、小さな蓄積があったのかもしれません。親友だなんだと肩を組んで笑い合っていた人が、ある日プツリと音信が途絶えてしまう経験を、私は二度ほど経験したことがあります。
自分が全く悪くないなどということはあり得ないでしょう。
どこかでお互いの気持ちに齟齬が生まれていた、ボタンは一つ、二つとかけ間違え、気を損ねてしまったのだと思います。
優しい人たちでした。賢い人たちでもありました。
無音の軋轢に気付けず、のうのうと口を開くのを止めなかった自分は、まさにビリーと重なっていくようで、本当に鑑賞中苦しい心で一杯になりました。
また演出も独特で本作特有の味となっており、劇伴も画作りも心地よく、私にはドストライクな演出のオンパレードでした。
ラストシークエンスのツイストも映画としての面白さを強調し、最高のカタルシスを生んでいました。
ただテンポはゆったりとしていて、もう少しタイトに編集することもできたように感じました。ハッキリ言って冗長さ、ダレができてしまっていたと思います。
その辺りだけがどうにも評価し難く、4.0に乗らなかった所以でもありました。
総じて、自分の境遇にも重なった、最も共感から遠かったところから、それでいて最も共感できるようになった主人公と出逢うことができた、自分の映画だ!と心から思える作品でした!