horahuki

ツールボックス・マーダーのhorahukiのレビュー・感想・評価

ツールボックス・マーダー(2003年製作の映画)
3.5
4月12日公開『ハロウィン』に向けて♫

デニスドネリー監督の70年代を代表する異色スラッシャーホラー『The Toolbox Murders』を『悪魔のいけにえ』のトビーフーパー監督がリメイク!

…とはいえアパートで工具を持った覆面殺人鬼が住民の女性を次々に殺していくという基本的なプロット以外はオリジナルとは全く違った作品となっていました…笑

設定を少しずつ積み上げることで、こいつがヒロインかな?と観客に思わせた後に呆気なく彼女を殺害するとこから始まるのは間違いなくオリジナルらしさなんだけど、そこからどんどんとアルジェントの『インフェルノ』やクレイヴンの『壁の中に誰かがいる』要素を帯びていき、カーペンターの『ハロウィン』までも取り込んでいくというごった煮感のある異色スラッシャーでした。

『ハロウィン』新作がオリジナルと本作のどちらを参考にしたのかはわかりませんが、もし本作を参考にしたのなら、オリジナル『ハロウィン』→本作→新作『ハロウィン』の流れで影響を与えたという面白い関係性が見えてきますね。

人の心を表す鏡でもある建物の深部へと進む道のりは自身の心の奥底へと深く入っていくことでもあり、その最深部に根ざす毒親の呪縛と対峙する作品だった『インフェルノ』(私の解釈では…笑)に対して、同様の展開を見せる本作もやはり心の奥に引っかかってる「しこり」や不安と対峙する作品を目指したのだろう痕跡は見られるのですが、少し雑だったような気がします。

本作の場合、それはやはり夢追い人を挫折へと誘うハリウッドという場所に巣食う「魔」であり、他方で彼女が未だに引きずっている父親の存在でもあるのだろうと思います。棺の中に横たわる亡き父親と、無数の死体の中から這い出てくる殺人鬼さんを同視しようとする意図は想像できるし、「死」から生まれた殺人鬼さんは、夢追い人にとっての「死」である挫折や無念の集合体のことなのだろうと思います。だからこそ「魔」の最深部には大量の死体があったのでしょうね。

『ハロウィン』を意識したであろう、画面の端にひっそりと浮かび上がる殺人鬼さんの映し方は良いものが多かったし、オカルト要素のある本作が『ハロウィン』のあのシーンを引用(というより完コピ笑)することにも必然性があったと思います。
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