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オニオン・フィールドの作品紹介

オニオン・フィールドのあらすじ

1963 年のある夜。コンビを組んだばかりの若い警官、カールとイアンは、違反した車を停める。乗っていたのはその冷酷ぶりで仲間からも恐れられるチンピラのグレッグだった。グレッグは逆にふたりを人里離れた農地へ連行した挙句、イアンを射殺してしまう。すぐに逮捕されたものの、獄中で司法制度を学び、自らを弁護して死刑を逃れ続けるグレッグ。一方、同僚を置いて逃亡したことで世間から冷たい視線を浴びたカールは激しい PTSD に悩まされ、その後の人生を大きく狂わせていくのだった。

オニオン・フィールドの監督

ハロルド・ベッカー

原題
THE ONION FIELD
製作年
1979年
製作国・地域
アメリカ
上映時間
120分
ジャンル
クライム
配給会社
コピアポア・フィルム

『オニオン・フィールド』に投稿された感想・評価

kuu
3.8
『オニオン・フィールド』
原題または英題 The Onion Field
製作年 1979年。上映時間 120分。
製作国 米国。
劇場公開日 2026年5月15日

元警察官の作家ジョゼフ・ウォンボーが、実際にあった警官殺害事件を題材に執筆した小説「オニオン・フィールドの殺人」を映画化。脚本をウォンボー自身が手がけている。

長年日本では劇場未公開やった知る人ぞ知る傑作であり、製作から45年以上を経て歴史的空白を埋める形で初公開が実現した。
​昨今の実録犯罪(トゥルー・クライム)ブームの中で、司法の不条理を描いた今作品のリアリズムが、現代の観客にも通用する時代を超越した強度を持っていると再評価されたことが公開の背景にあるそうです。

1963年3月、カリフォルニアの静寂を切り裂き、二人の巡査を漆黒の闇へと引きずり込んだタマネギ畑への連行。
そこから始まる惨劇は、肉体的な死を超えた、精神とシステムの崩壊劇と云えます。
原作者ジョゼフ・ウォンボーが、元刑事という当事者のみが持ち得る血の通った筆致で描き出したのは、加害者と被害者の深層心理に潜む、救いようのない澱みでした。

​ジェームズ・ウッズが怪演したグレゴリー・パウエルって男は、まさに捕食者としてのサイコパシーを体現してた。
彼は高い知性と、相手を煙に巻く饒舌さを武器に、周囲を自らの欲望を満たすための道具へと変貌させ、ここで特筆すべきなんは、共犯者スミスとの間に形成される、極めて歪な共依存の力学です。

混血という出自から民族的差別の荒波に揉まれ、自己のアイデンティティを喪失していたスミスにとって、パウエルは支配者であると同時に、初めて自分を必要とした父性的存在でもあったんやろな。
二人の間に漂う、湿り気を帯びた潜在的な同性愛的ニュアンスは、単なる性的指向の問題ではなく、孤独な魂が強権的な他者に魂を明け渡してしまう隷属の美学として機能し、この密室的な心理的連結が、理性を焼き切り、タマネギ畑での凶行を不可避なものとしたんやろな。

余談ながら、混血と表記しましたが、現代的な表現で云えば、ミックスやダブルに該当するけど、今作品の文脈、とりわけ1960年代のアメリカ社会においては、より過酷で断絶的な意味合いを帯びているのであえて混血としました。
作中でジミー・スミスが置かれた状況は、単に二つのルーツを持つ瑞々しい多様性などやなく、白人社会からも黒人社会からも拒絶される帰る場所のない境界線上の存在としての絶望だし、当時の人種隔離の残滓が色濃い社会において、彼は自らのアイデンティティを確立できぬまま、常にマジョリティの顔色を窺い、自己否定の影に怯えて生きてきたんやろと。

​この民族的な疎外感こそが、彼をパウエルちゅう絶対的な支配者へ依存させる決定的な要因となっているし、彼にとってパウエルは、自分を社会のゴミとしてではなく、目的遂行のための半身として扱った唯一の存在やった。
混血ゆえの孤独が、結果として彼をタマネギ畑の惨劇へと引きずり込む精神的な檻となったのやろう。

​しかし、今作品が真に精神を削るんは、銃弾から逃げ延びたはずの生存者に襲いかかる、組織的かつ心理的な二次被害の描写で、九死に一生を得た巡査を待ち受けていたんは、温かな労いじゃなく、当時の警察組織に蔓延していた、警官は死ぬまで戦うべきって前時代的なマッチョイズムによる断罪やった。
生き残ったこと自体を罪とする周囲の冷徹な視線は、彼の心に重度のサバイバーズ・ギルト(生存罪悪感)を植え付け、深淵な鬱病の淵へと突き落とす。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)って概念が一般的やなかった時代、彼が自己破壊的な行動を繰り返し、徐々に人間としての尊厳を剥奪されていく過程は、人格が内側から腐食していく精密な臨床記録に等しいかな。

​さらに物語は、個人の精神的崩壊を越え、法システムの機能不全を冷徹に糾弾する。
法治国家の根幹を成す正当な手続きが、皮肉にも犯人たちの延命装置として機能してしまうパラドックス。
犯人たちは自らの罪と向き合う代わりに、法の穴を狡猾に突き、再審と控訴を繰り返すことで、司法そのものを泥沼のゲームへと引きずり込む。
そこにあるのは、誠実な者が法に見捨てられ、クソ知恵の働く者が法に守られるちゅう、近代司法が抱える致命的なバグそのもの。
人種差別が色濃く残る社会背景の中で、法廷は真実を希求する聖域ではなく、冷酷なロジックが被害者の傷口を広げ続けるだけの無限回廊と化していく。
因みに1970年に同じようなニューホール事件ってのがあります。
この元ネタのオニオン・フィールド事件と並んで、アメリカの警察学校で必ず教えられる事件やそうです。

​ジェームズ・ウッズの、神経を逆撫でするよな瞬きを忘れた瞳の演技は、観る者の本能的な恐怖を呼び覚ましますし、対照的に、ジョン・サヴェージが見せる、音もなく崩れ落ちていく精神の静かな叫びは、救いのない悲劇を可視化していました。
また、若き日のサミュエル・L・ジャクソンが映画デビューを果たしているちゅう事実も、後の映画史を知る者にとっては、暴力の連鎖を見守る奇妙な因縁を感じさせます。

​今作品は、勧善懲悪という安易なカタルシスを一切拒絶し、そこにあるのは、人間と云う生き物が抱える底なしの虚無と、それでもなお生き延びようとする泥臭く、時に醜悪なまでの執着。
製作から半世紀近くを経た今、このリバイバル上映を鑑賞することは、文明と呼んでいるシステムの脆弱さと、人間精神の暗部を再確認する、極めて知的で痛烈な体験となると思います。


あらすじ・キャスト
1963年のある夜。無法者のグレッグは交通違反のため警官のイアンとカールに停車を命じられるが、逆に2人を誘拐し、タマネギ畑に連行してイアンを射殺する。逮捕されたグレッグは獄中で司法制度を学び、自らを弁護して死刑を逃れるものの、目の前で同僚を殺されたカールは激しい心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされ、その後の人生を大きく狂わせていく。

グレッグを演じた若き日のジェームズ・ウッズが、第37回ゴールデングローブ賞の主演男優賞(ドラマ部門)にノミネートされた。カール役は「ディア・ハンター」のジョン・サベージ。監督は「冷たい月を抱く女」「シー・オブ・ラブ」で知られるハロルド・ベッカー。日本では長らく劇場未公開だったが、2026年に特集上映「新宿ハードコア傑作選2」(26年4月17日~5月21日/シネマート新宿)にて劇場初公開。
minavo
5.0
日本で年に12本以上(月1回以上)映画館で映画を観る「コア層」は、映画鑑賞者の約10%で、このコア層が全体の興行収入の約4〜5割を支える最重要層だそうです。

そんな中、銘打たれた新宿シネマートの『新宿ハードコア傑作選2』。勝手にハードコア層向けの映画を集めたラインナップと受けとり観てきました。

今回は、日本未公開の本作。いつもはあらすじも読まないで観ることも多いのですが、さすがにビビってちょっとだけあらすじ読んでいきました。

2人組の警察官のうち、1人がチンピラに銃殺されたのに、チンピラが知能犯で裁判で自分を弁護する話。

クライムアクションかと思いきや、元警官の原作者が脚本に関わった実録サスペンス&法廷ドラマ。

アメリカではそこそこヒットしたみたいですけど、なんで日本未公開なのか?逆にいま公開することで、ボカシの必要のない刑務所の黒人男性の局部がダラリと映るのも感慨深い。

まず、前半の実録サスペンスパートから、頭が回る悪いヤツ、グレッグに巻き込まれて片棒担がされるジミーの関係性の会話劇がヒリヒリしてよい。殺さなくちゃいけなくなったきっかけもジミーのうっかり発言なんですよね。

なお、リンドバーグ法については、犯人が「州境を越えなければリンドバーグ法(連邦法)は適用されず、死刑にもならない」と誤解して誘拐を実行し、警官殺害へとエスカレートしていくってことみたいです。

それ以外にも勾留中に法律が変わって、犯人が法律を学んで悪用していくことも描かれます。この勾留中に別の知能犯みたいなおじさんがアドバイスするのですが、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のドクこと、クリストファー・ロイドがギョロ目を輝かせて怪演してスポットでも存在感あります。

あらすじ読んだ時はなんか後味悪い系かなと思ってましたが、冒頭ののどかな日常とつながるラストで、普通にいい映画でした。
katoyu
4.5
2026年劇場鑑賞100本目。
これは相当渋い、ホント渋〜い映画でした。何やら日本初公開、まぁ、確かにね、配役も渋すぎだし、実話ってところもまぁ地味と言えば地味だしね。でも、しっかりとした、重厚な作品でした。ジェームスウッズ、ヤバいでしょ…ホント。ジョンサベージの田舎での真面目な警官感も適役。若きテッドドンソン…最近はコメディ作品でよく見ますが、精悍な刑事として、シュッとしてました。うん、いい映画、こういうのは観ておかないとダメですね。

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