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ゾンビ襲来のhorahukiのレビュー・感想・評価

ゾンビ襲来(1973年製作の映画)
3.4
悪は存在するのか?

11月はゾンビ㉙

人類の起源を研究してた博士が「この世全ての悪」を発見してしまい、「世界から悪を根絶できるのは自分しかいない!」というとち狂った使命に目覚めてしまうイギリス産ホラー映画。

クリストファーリー×ピーターカッシングが異母兄弟役で研究を奪い合う科学者バトル。更には監督がフレディフランシスというハマーを思わせる布陣。内容的にも怪奇映画の趣が強く、全編から漂うゴシックなムード、禁忌を侵す研究、ショッキングな表現などハマーフィルムの作品だと言われても信じちゃうレベル。

ニューギニアでネアンデルタール人よりも遥かに古い人骨を発見したカッシングは、持ち帰って研究のために骨を洗浄していると、水をかけた部分に皮膚が再生していくのを目の当たりにする。そして更に研究を続けるうちにこの人骨が全ての悪の源だと気づいたカッシングは、再生した部分から血液を採取し、「悪の予防注射」を開発。これを人に投与することで悪をこの世から消し去ることがきるというトンデモ理論のもと、早速娘に注射したら案の定大変なことになる話。

カッシングの妻は精神疾患を患っており、リーが経営する精神病院に入院していたのだけど、最近亡くなったばかり。精神疾患が娘に遺伝することを恐れるカッシングは、娘には母親がはるか昔に亡くなったと説明してたいた。しかし、ひょんなことから母が精神病だったこと、最近まで生きていたことがバレてしまう。ショックを受ける娘を見て焦ったカッシングは碌に臨床試験もしないままに「悪の予防注射」を娘に注射してしまうという流れ。舞台が1893年ということもあり、遺伝説もあったのだろうけれど、速攻で注射しちゃうなんてただのアホやん。

異国から太古の骨(化石)を持ち帰る設定は、前年製作で同じくリーとカッシングが共演した『ホラーエクスプレス』を参考にしてそう。あちらではリーが化石を持ち帰る役だったため、役割が逆転しているのが面白い。物語は詰め込み過ぎでやぼったいのだけど、フランシスが監督だからか閉鎖的な屋敷の中でも躍動感のある流麗なカメラワークが退屈させない。

3000年前の太古から悪を蘇らせてしまうことで善悪の対決へと物語は傾いていくのだけど、あくまでも内面的な話に終始する手堅い脚本も面白かった。長年、娘につき続けた母親についての嘘が親子の関係性に濃い闇を生み、そのことが娘の心的崩壊へと直結する。その起点を、太古からの悪を注入することと「過去の過ち=悪」という点でリンクさせたホラー的設定との交差は強引ながらも的確で、負の感情の出どころを異次元(非現実)由来とするのは、『プロメア』や『ブライトバーン』、そして来年日本でも公開される『ダニエル』だったりと最近流行している要素で、そのプロトタイプをこの時点でやっているのは興味深い。

プロトタイプと書いたのは、異次元由来でもなんでもなく、人の独善的な傲慢と結論付けているから。それを強固にするために、精神病院から脱出する患者のエピソードがあったり、復活してくるゾンビが特に目立ったことをしなかったりするのだけど、そのあたりのせいで少し散漫になっているのは残念だった。

『がっこうぐらし』と『ドーンオブザデッド』を見直したので、今月のゾンビ映画は29本目です。感想はそれぞれ追記してます。
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