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その女を殺せのryosukeのレビュー・感想・評価

その女を殺せ(1952年製作の映画)
4.3
無駄なシーンが全く無く、全編に渡ってサスペンスを維持することに成功している贅肉の削ぎ落とされた傑作。ファーストカットから切れ味鋭い。こういう70分程度でしっかり見応えのある作品を見ていると現在平均的な映画が二時間程度あることに何の必然性があるのか分からなくなってくる。
騒がしい子供や太った男など一度出てきた人物を効率的に再利用していくのも鮮やか。落下する真珠が暗闇の敵に吸い寄せられたり、並列する列車の窓の反射を利用して室内の様子を伺ったり、倒れた拍子にレコードに針が落とされたりと舞台装置や小道具の利用に工夫が見られるのも楽しい。ピタゴラスイッチ的面白さ。
接写による肉弾戦にも生々しい迫力がある。足蹴にされるカメラ!
ラスト、トンネルで近づいてきたスーツが敵だったりするのかと思ったが、そこの裏切りは無し。
しかしマリー・ウィンザーは(映画内の役を)熱演し過ぎだな。あんな捜査官いないだろ感はあるがまあ魅力的だからいいや。呑気にレコードなんか聞いてしまうのは囮に徹しているからだと思っておこう。
囮をわざわざ用意しておいたのに敵の誤解によってむしろ本命に辿り着かれることになる、という逆の逆で元に戻る式のアイデアも素晴らしい。そのどんでん返しに冒頭殉職した警官のセリフが絡んでくるのも心憎い。
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