フラハティ

ルートヴィヒ 完全復元版のフラハティのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ 完全復元版(1972年製作の映画)
3.9
“狂王”と呼ばれた王の生涯。


ヴィスコンティの「ドイツ三部作」の幕引きとなる本作。
ヴィスコンティ史上最も長い、四時間もの時間をかけた本作(復元版ということではあるけど)。
きっとヴィスコンティは、ルートヴィヒ二世という人物に自分を重ねていたのかもしれない。

異常なまでに豪華なセットには、当時の貴族生活が垣間見えるようでこだわりがすごい。
地下に白鳥の湖を作るセンスよ。
ヘルムート・バーガーの演技も強烈で、序盤での美青年ぶりは、当時のルートヴィヒ二世をも思わせる。
写真見る感じそっくり!
しかし、後半から精神的病が噂されるようになってからの彼は、明らかに危うくなっていく。
歯はボロボロになり、髭は伸ばしっぱなしで、国政に興味を失う。
18歳という年齢で王位に就いたが、41歳という若さで謎の死を遂げたこの王は、どんな人生をたどっていたのか。


芸術を愛したルートヴィヒ。
敬愛するのはワーグナー。
金ばかりの下衆な民衆たちは、なぜ芸術の良さを理解しないのか。
戦争ばかりのこの時代、なぜ平和というものは訪れない。
「私は幻想に胸を膨らませた人間。」
男ばかりを愛するようになった彼は、内部のものからはあまり良い印象を抱かれていなかった。
国政にも関心を示さず、結婚もせず、戦争にも反対しているからだ。
国民には人気があったという。
戦争に反対していたし、結果として戦争には破れてしまったわけだからね。

エリザベートという、ルートヴィヒとは従姉関係である女性は強く美しい。
彼が生涯ただ一人愛した女性は、彼女しかいない。


望んではいなかった王位の座へ。
望んではいなかった戦争へ。
模索する生き方と人生。
孤独が付きまとう苦しみ。
この時代に生まれていなければ、きっと今は芸術に囲まれた幸せな人生を送っていたはず。

重厚に描かれながら、破滅へと向かっていく男の姿。
栄光のように感じられた一時の時間は、いつしか裏切りによって、闇へと姿を変える。
芸術を愛し、孤独な運命を背負わされた王は、いつしか死の臭いを漂わせる。

王である限り、私は私という生き方はできない。
ルートヴィヒ二世とは、王という立場でしか生きることは許されないから。
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