いの

地獄の逃避行のいののレビュー・感想・評価

地獄の逃避行(1973年製作の映画)
4.2
映画センセイ:
「ここで問題です。『地獄の逃避行』『スウィート・シング』『トゥルー・ロマンス』 この3作の共通項とはなんでしょーか?」


いの:
「(即)はいっっっ! 答えはマリンバですっ!」

 
(まばらな拍手)


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スウィート・シングからこちらに来ました。アレクサンダー・ロックウェルが、「テレンス・マリック近年の映画はアレでナンやけど、初期作めっちゃいいんだかんねー」(*1:いの風の雑な超訳) 
そのお言葉を信じて観てみることに。マリンバのあの曲、大好きだし♪



そして観てみて思う。あぁ、アタシはこういう映画に(も)出会いたくて、映画観てるんだなーって。例えばだけど、日常生活に於いては、どんな理由だとしても人を殺すのなんてダメ、ゼッタイ! とかって思ってるけども、映画みてたら、あんなヤツ殺されちまっても仕方ないとか、殺っちまえー!とか思ったりする。日常生活に於いては、例えばだけど、メディアなどはすぐに事件の背景とか理由とかをわかりやすく規定しようとする。でも映画みてたらアタシは、そんなんわかるわけないって思う。アタシは自分自身の心だってわかってないし(言葉にしようとあがくことは多いけど)、自分の行動のほとんどは説明できないし。


マーティン・シーンだってシシー・スペイセクだって、解釈しようとせず、まんまその人物を生きたのだという気がする。だからアタシは、それをそのまま受け取って、言葉にならない何かを感じるしかない。優しい陽光がふたりを包む。あまりに幼く、実感をつかめないふたり。起こしたことの大きさを感じることのできないふたり。他者の有り様を想像してみるなんてこと考えもつかないであろうふたり。まるでファンタジーみたいな景色のなかで、残虐なことは行われる。



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特典映像で知ったこと

・今作がつくられた時には、マーティン・シーンもシシー・スペイセクもテレンス・マリックもまだ無名で、でもスタッフ含めたみんなが傑作になると確信していたのだという話があった。傑作ができるときというのは、そういうことなんだろうなと感じ入った。


・マーティン・シーンは日常線上にある狂気を淡々と演じてたけど、この演技がかわれて、のちの「地獄の黙示録」での起用となったのかな。と想像してみる。シシー・スペイセクはこののち「キャリー」に。


・美術監督のジャック・フィフク氏のこだわり。今作でシシー・スペイセクと出会い、結婚に至ったそうだ。


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(*1)
記憶だけを頼りに、あまりも雑に書いたことが気にかかり、念のため確認しました。アレクサンダー・ロックウェルはこのように言ってました。「ただ、僕の好きなテレンス・マリックの映画は『天国の日々』までなんです。」(『スウィート・シング』のパンフレットより)




〈追記〉2021.12.29
自分用のメモ
・「Gassenhauer」
ドイツの作曲家カール・オルフが子どもの音楽教育のために作った曲。『SWEET THING』でも使用。『トゥルー・ロマンス』では、ハンス・ジマーがあえてこの似せて曲をつくったとのこと(「You're So Cool」)
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