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ボディ・スナッチャーズのRのレビュー・感想・評価

ボディ・スナッチャーズ(1993年製作の映画)
3.8
先日見たインベージョンと同一原作の3回目の映画化で、中学の時に初めて見て魅了され、何度も見たのを記憶している。それ以来初。めちゃめちゃお久しぶり。やっぱかなり面白い。大人になって見ると、ただのSFホラーとして以上に、もっと深いところで楽しめる作品になっている。主人公の美女マーティの一家は、パパが環境調査に参加するため、米軍基地に住むことになるんやけど、そこにいる人々とお父さんの再婚した継母の様子がいつの間にやらおかしくなっている。どうやら寝ている間に宇宙からやってきたキモい植物に体を乗っ取られているらしいことが分かってくる。この乗っ取りシーンが素晴らしい。ウニョウニョがシュルシュルしたあとバシューンする様は必見! 気持ち悪! で、乗っ取られた人間はどうなってまうかというと、元のままの姿なんやけど、感情の波や個体差がなくなり、種としての総体の繁栄のため、ひたすら仲間を増やすことだけを機能的に行っていくようになる。感情の波がなくなるから、同種間の争いが起こらなくなり、迷いもなくなり、スッキリする。何のためらいもなく単一の使命の遂行に集中できる。この設定の面白さよ! 人間は、憎悪、憤怒、嫉妬などの感情があるからこそ、それらが欲望の炎と合わさって魔性となり、最悪、戦争が起こってしまう。個体差があるからこそ、自分の使命が何なのか、何が100%正しいことなのか分からず、目的もバラバラ、故に迷いが生まれ、行動にディレイがかかる。しかし、まったく同じ理由で、我々には愛があり、友情があり、喜びがあり、幸福がある。そんな当たり前のことを、ほとんどが夜闇に展開するおどろおどろしいホラーを通して、ハッと思い出させてくれるような説得力を持って描いてある。面白い! それに加えて、軍隊の持っている個を埋没させる圧力も比喩的に描かれるし、湾岸戦争への言及もあり、巧みにストーリーと社会性が絡み合う。もう一歩誰にでも当てはまる身近さで考えて見ると、資本主義社会の在り方もまさにボディスナッチャーズ的であると言える。人間が感情と個別性を奪われ、会社の利益のためだけに機械のように働いて暮らす。そのシステムを存続させるためだけに、次々に若者たちをリクルートする。初めは彼らが抱いていた興奮、喜び、やる気、疑い、怒り、迷いなども、やがては消え、ヒューマンとしての生気をカラカラに吸い尽くされるまで使用される。ただ残念なことに、どれだけ非人間的なシステムに暮らしていようと、人間にはやっぱり感情がある、ということ。かわいそう! いっそこのエイリアンみたいに生きられたら、まだいくらか幸せだろうに! ということで、ボディスナッチャーズと真反対な社会を作ること、それこそがユートピアとなるだろう! 頑張ろう! と結論づくかと思いきや、とても皮肉な、元の木阿弥エンディングを迎えます。そっか! そーなるかー! おもしろい! あと、シンプルだがカッコいいオープニングクレジットと、全編ジワジワくる音楽が最高! マーティ演じるガブリエルアンウォーがなかなかの美女で見ごたえあり! さー、お次は2回目の映画化のやつを久々に見てみるかな。アレも確かめちゃくちゃ怖かったよなぁ。
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