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シリアル・キラー アイリーン 「モンスター」と呼ばれた女のRのレビュー・感想・評価

4.1
先日見て死ぬほどショックを受けた大傑作モンスターの主人公アイリーンの、あのアイリーンウォーノス本人を、2002年に死刑執行されるまで追い続けたドキュメンタリー。事件の内容についてはそこまで詳細には触れられず、ヒッチハイクしながら売春してたアイリーンが7人の男性を殺害し、死刑宣告を受けた、という事実だけが語られる。なので、これ見る前にちょこっとネットで調べるか、または劇映画のモンスターを見ておいたほうが分かりやすいかも。その前提で書いていきます。このドキュメンタリーが撮影されてる期間だけでも、アイリーンの発言は様々に変化し、混乱もしてて、どれが真実なんだかハッキリとは分からないのだが、一ヶ所だけカメラが回ってないつもりで話してるシーンがものすごく印象に残る。ただただ死刑執行を早めたい一心で、法廷では、正当防衛の殺人は一件もなかったと言い張ったアイリーンだが、彼女の本音は、きっとあれだったに違いない……と思わせておきながら、その後、死刑執行が近づくにつれて、明らかに精神が錯乱していって、ますますよくわからなくなってしまう上、見ててホンマに痛々しい。同時に、アイリーンの生い立ちも語られていくんやけど、ひたすら暴行とレイプと赤貧に苦しみながら、強い生存本能だけを頼りに生き抜いた、地獄としか言いようのない人生で、はじめからこうなる運命だったとしか言いようがないくらい、不可抗力的な流れを感じさせる。しかも、いろいろ証言してる昔の知り合いや友人も、どれが本物なのかフェイクなのか分からないし、アイリーンをネタに金儲けを目論んだり、政治利用しようとしたり、まじ最悪な人間ばかり。そんな中、ホントにアイリーンのことを思ってる人たちも、少ないけれどちゃんといたり、アイリーンが普通にフレンドリーで楽しそうな瞬間もたくさんあって、見ててホント、ものすごい気分にさせられる。アイリーンの最後の撮影も、最後の食事も、最期の言葉も、ほんまに悲惨としか言いようがなかった。そして、監督に向けてアイリーンの口から衝動のように弾き出るI love you! の言葉の重み……人間という存在に深く突き刺さっている根源的な問題と、どうあがいても逃れられない残酷な運命について、深く深く考えさせる、超ド級の重さのドキュメンタリーだった。一体どうすればこういう目に遭っている人たちは救済されうるのだろうか。私個人としては、その答えは、必ずある、と思っているし、その答えは万人の中にそれぞれが持っているものだとも思っている。だって、こんな地獄からでも、身を起こし、立ち上がり、自分の宿命の鉄鎖を身をよじって解いていった人たちも、世界に少なからず存在しているからだ。ほんとはもっといろいろ語りたいところだが、長くなるので控えます。最後に、アイリーンがお葬式でかけてくれと言った歌、Natalie MerchantのCarnival、最高っす。聴いてると涙出てきます。モンスター、もう一度見たくなったわ。やっぱ買お。
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