いの

カラフルのいののレビュー・感想・評価

カラフル(2010年製作の映画)
4.0
“他の誰とも違う唯一無二のわたし”でなければならない時と、“他の誰とも同じであるわたし”でなければならない時。唯一無二の色でありたいときと、他者と一緒に同じ色でありたいとき。どっちの自分も必要だし、どっちの自分も捨ててしまいたい。中高校生のわたしは、特にそのふたつの間で、大きく揺れ動く時期なのかもしれない。振り幅が大きいことに耐えられなかったり、その時周りにいる人を巻き込んだり傷つけたり。自分だけと思って傷ついたり。


他の誰でもないわたしでなければならない時もあるし、他の誰でもないわたしでいることが、もの凄く辛いこともある。自分のなかにある残酷さに気づいて、なにもかもをぶち壊したくなることもある。「みんなそうだよ。いろんな絵の具を持っているんだ。きれいな色も、汚い色も。」美術室での、ちひろと真が会話する場面で静かに泣きました。そしてそこに、校舎のどこからかきこえてくるアンジェラ・アキの合唱曲。あゝ、中学校ってこうなんだよなーって思ったりして。


街並みや駅周辺など、普段当たり前のように過ごしている風景がハッとする程うつくしい。そんな場面がいくつもあって、その風景の優しさが、主人公の真を包み込んでいる。真が早乙女くんと友情を築き上げていく場面は、ゆっくりゆったりと。玉電にまつわる話は、多分原作にはない場面だと思うけど、それらの場面もとても良かった。宮﨑あおいの演じる佐野唱子もいい。単館シアター系の映画に出てた頃の宮﨑さんと重なります。麻生久美子さんは、くんちゃんのときもそうだったけど母親役とてもいいですね。母の想い(苦しさも悲しみもこらえる姿も含めて)、痛かった。着るの拒んでた空色のジャケット(ブルーハーツの「青空」の色だったんですね)を、のちに真が身に着けていることで、直接的には描かれなかった小林家のその後を想像する。



もう通りすぎたものとして、原作読み返すつもりはなかったのに、この映画観たら、また原作を読んでみたくなった。手放したと思ってた原作は、まだ本棚の奥に佇んでいて、わたしが再び手にとる日を待ってくれてたみたいだ。今、平家物語(訳:古川日出男)読んでるところなのに-w




【追記】2022.03.15
原作読了(再読)
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