姉さん、聴こえる?世界を変える僕の歌が…
紛争地パレスチナ・ガザ地区で暮らし、スター歌手になり世界を変えたいと夢見る少年ムハンマドは、姉ヌールや友人たちとバンドを結成し、街中で歌声を披露していた。弟の才能を信じるヌールはカイロのオペラハウスに出るという目標を掲げる。結婚パーティーなどで歌うムハンマドの美しい歌声は、人々を次々とトリコにしていった。
そんな矢先、ヌールが病気を患い…
ザックリ言うとストーリーはこんな感じ
実話を基に作られた作品。
パレスチナ・ガザ地区。
そこはパレスチナ自治政府の行政区画であり、イスラエルと激しく対立し、障壁や検問所による封鎖を受けており、爆撃侵攻に晒され、別名「天井のない監獄」
とも言われる地域。
作品の前半は、そんな厳しい環境の中で暮らすムハンマドらの子供時代が描かれる。貧しい環境の中でも、ムハンマドは何気に楽しそう。それはここを出て、エジプト・カイロでスター歌手になる夢があるから。まず手始めに楽器を揃える為に、色々な事でお金を稼ぐ(結婚パーティーで歌を歌ったり、海で捕った魚を売ったり)
そして楽器を手に入れ、音楽教師カマールに指導を受けたりと順調に夢を進めていく。
そんな中、ヌールが病に倒れる。
"腎不全"、それが彼女が冒された病。
ムハンマドは大好きな姉の為に、お金を稼ぐのだが、そのかいもなくヌールは…
と、ここで前半が終わる。
作品の後半は大きくなったムハンマドが描かれる。姉の死後、スター歌手になることも、すっかり諦め、ただ生きるだけの生活を送る様になったムハンマド。
そんなムハンマドの前に"ある人物"が現れる。そして、その事はムハンマドの運命を大きく変えていく。
姉ヌールは、誰から何を言われようと、弟ムハンマドの才能を疑わなかった。
そんな彼女とムハンマドは、約束をする
「世界を変えるようなスターになる」と
戦闘や爆撃で破壊尽くされ仕事も限定的なものしかない。
そして、彼は決める。
姉と約束を守る事を…
中盤からラストに向けて、心が揺さぶられる事が多かったかな。
障壁や検問所が至る所にあるガザから、他の国に行くことは至難の技。捕まれば刑務所に入れられる事はもちろん、最悪死まで覚悟しなければならない。
普通だったら、自分の命の方が大事だから諦めるよね。
でも彼は進むことに決めた。
それは姉ヌールとの約束を守るためと、
小さい頃カマール先生から言われた言葉
「夢など虚しいと思うな!最後に残るのは夢だ」
って言葉に励まされたからだと思う。
そして、やっぱ音楽は国境を越えるよね
そんな馴染みのない中東の楽曲なのに、何故か涙が止まらないんだよね。そこに彼の魂がこもっているからなんだろうけど…
ラストのシーンだけ、実際の映像が流れるんだけど、そこに映る人々の笑顔…
観ていたら涙が止まらなかったなぁ…
この作品の監督は、他者への思いやりや誠実さを描きたかったらしいが、それは充分に伝わる作品だったと思う。