茜

サンシャイン・クリーニングの茜のレビュー・感想・評価

4.0
とある愛すべき家族の絆と再生の物語。
最初はそこまで期待していなかったものの、これがなかなか前向きでポジティブな良い話だった。

かつてチアガールの花形的存在だったローズは、今や8歳の息子を抱えるシングルマザーで、別のクラスメイトと結婚した同級生の元カレと不倫中。
ローズの妹ノラは独身で定職もなく、実家に寄生して父親と共に暮らしている、所謂パラサイトシングル。
そんな訳あり姉妹が生活の為に始めたのが、事故現場や孤独死現場を清掃するクリーニング業。
その現場を通して様々な人々に出会い、時にトラブルに見舞われながらも、心を通わせて成長していく家族の姿が実に素敵だった。

ローズとノラ姉妹は幼い頃に母親を自殺で亡くしていて、今だにその不幸な死を引きずっている。
そんな二人が始めた仕事が、人の死と向き合う現場清掃業という点が何とも言えない巡り合わせだと感じた。
ましてや現場清掃といえば血や汚物に蛆虫に悪臭もてんこもりで、お世辞にも恵まれた綺麗な仕事とは言えない。
それでもひたむきに現場と向き合う姉妹を、明るくコメディタッチに描いている点が悲壮感を感じさせなくてとても良かった。

この映画は所謂「負け組」な人達の絆や再生を描いた物語と言われているけれど、私はこんなにひたむきに生きる人達の事を負け組だなんて思えなかった。
過去の辛い思い出や、生きるうえでは避けられない様々な物事やトラブルといったものに、真っ直ぐに向き合う家族の姿を観ていると、不思議とこちらまで勇気や希望が湧いてくる。
大切な人を亡くした経験がある人ならば、きっと心に響くシーンや言葉が沢山あると思うし、日々の生活や人生にもどかしさや不満を感じている人にも観てもらいたい、まさしく「サンシャイン」な映画でした。
茜