Ricola

鏡の中にある如くのRicolaのレビュー・感想・評価

鏡の中にある如く(1961年製作の映画)
4.2
ベルイマン監督の神の沈黙(不在)三部作の一作目。

映像美はさることながら、登場人物それぞれの役どころが絶妙であることと、まさに神の「沈黙」に関する表現に圧倒された。


沈黙、精神、欲望…。
それぞれの役割を担う、彼らの絡み合う感情は苦しいけれど目を見張らざるをえない。


虚無的空間の美しさについ魅入る。
隣の部屋から見ているような冷めたカメラワーク。

何度も映る窓から見える空と海が特に印象的だった。穏やかで美しく、どこか神々しい雰囲気を感じるほどだった。
それはまさに神の居場所を表しているようにも見える。

それらが反射した光が壁に映る瞬間に目を奪われたのは、彼女だけではないはずだ。この世のものではないような、神秘的なオーラを放っていた。

神のような海の見える窓側に佇む父は、神の位置にいるかのように思えた。
子供にとって父は絶対的存在という意味では神であるのかもしれない。

サイレントの巨匠、グリフィスの「不変の海」を彷彿とさせるような常に変わらぬ姿の海が脇役とは言い難いほど、大きな役割を担っていたようだ。
神の沈黙とはまさにその不変さを表しているのだろう。

ラスト20分ほどのより厳かな雰囲気に呑み込まれ、この作品におけるそれぞれのキャラクターの感情と理性の着地に息が詰まる思いだった。
ラストシーンの美しさは忘れられない。
Ricola

Ricola