クリスマスになっても開けちゃダメ!
12月はクリスマス②
サンタ絶対殺すマンな仮面殺人鬼が、クリスマスシーズンで街の至る所にいるサンタを片っ端から掃除していくジャーロ風味なスラッシャー。
昨日の『サンタが殺しにやってくる』はサンタが殺人鬼だったけれど、本作ではサンタは狙われる側。サンタの衣装を着るだけで殺しの標的になるという地獄。『サンタが殺しに…』以外にも数多いる殺人鬼サンタに遭遇したらどうなるのか見てみたい!むしろそういう映画を作って欲しい!
車に乗ってイチャコラするカップル(男がサンタコス)を真正面に据えた一人称カメラが荒い息遣いを伴って少しずつ接近していくプロローグの演出はまるでジャーロのよう。2人を舐め回すかのように車を一周するカメラの羨望とも蔑視とも取れる内面を投影した変態性はナイフを腹に突き刺すに至るまで継続され、その内面全てを攻撃性に転換して発露する殺害時の演出まで非常にジャーロ的で好み。
プロローグほどの際立ったものはその後見られなかったけれど、槍のような長柄のモノを投擲しての串刺しや、カミソリ、ナタなど凶器が多彩。あまりスラッシャーやジャーロでは見られない銃も使い、相手に逃げられるのではなく追い詰めたのにあえて殺さないという選択をするところに屈折した内面が見え隠れするし、「殺さない」から屈折を演出するのは面白いと思う。
「サンタ殺し」は誰なのか。警視総監と対立してまでも熱意を持って事件を捜査する警部とその相棒には警察の頼もしさ的なものを滲み出しつつも、怪しげな新聞記者のタレコミでその警察側までも犯人候補に仕立て上げられるミステリー展開。更には主人公のカップルまでも候補に上がる。主人公含め登場人物全員が怪しく思えてくる撹乱のさせ方は面白いはずなのに「撹乱させよう」という製作陣の意図が透けて見えてしまう付け焼き刃なポンコツ演出のおかげで、観客の視点は一切ぶれず撹乱には至らないという悲しさは残念だった。
そんで幼くしてサンタがヤッてるところを目撃したことがトラウマの発端になるのは『サンタが殺しにやってくる』と近く、サンタホラーの定番設定なのかも。他のやつもこの機会に見ていきたい。