ぎー

幸せなひとりぼっちのぎーのレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
4.0
【第89回アカデミー賞特集3作品目】
"最愛の妻を亡くした59才の老人の幸せな独居生活"
文句なしの傑作。
映画史上でも、最も見る人の心を温かくする映画の一つではないか。
一部の限られた先進国ではなく、世界全体が高齢化という大きな課題に直面するようになった中、万国共通で人々が抱える不安は、大なり小なり老後の過ごし方、最期の迎え方かもしれない。
だからこそ、この映画は全ての人に希望を与える映画だと言える。
たとえ最愛の妻に先立たれても、愛する両親を事故で失っても、お腹の中の子供を失い二度と子供を産めない状況になったとしても、仕事をクビになったとしても、幸せな人生は送れるし、幸せな最期を迎えることはできる。
主人公のオーヴェが悲観的だからこそ、そして、特に最愛の妻を失い仕事を失った時に生きがいを見出せず自ら命を断とうとしていたからこそ、説得力があるし心に響く。
そんなにこの世は悪くない。

孤独化が進む現代社会に対して、説教臭くなく共助の大切さを説く映画でもあったと思う。
ルール通りに、他人は他人、自分は自分で生きていく必要はないし、人間はそんなに強くなく、完璧でもない。
隣人同士、知人同士助け合って、補い合って、関わり合って生きていくことが何よりも大事なことなのだ。
たとえ愛車を汚されようと、愛する自宅に野良猫を連れ込まれようと。

このように感動大作で、ともすれば重くなってしまいそうなテーマだけど、この映画は全然違う。
主人公が仕事も家族も失った独り身の男の日常生活であるにもかかわらずだ。
非常にセンスの良いユーモアが散りばめられていて、どんどん映画にのめり込んで行って、あっという間にラストの感動のうねりを迎える。
テーマや温度感だけでなく、その構成も含めて完璧な映画だったと思う。
ぎー

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