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不安は魂を食いつくす/不安と魂の10000lyfhのレビュー・感想・評価

4.0
60歳くらいのドイツ人女性と、30代らしきモロッコ人労働者男性との、周囲の冷たい反応の影響でほころびてしまう、恋愛と結婚生活。シンプルなストーリーが、いわゆる「普通の人たち」の排外心や、それを受ける側が愛や絆をぐらつかせてしまう過程を、残酷なまでにリアルにあぶり出す。最も刺さったのは、外国人男性との結婚を理由に、いったんは仕事仲間から疎外された女性主人公が、人員の入れ替り後、外国人の疎外に加担させられた際に、何もできないでいること。本作では、そういった日常の小さな出来事の積み重ねが、主人公がかつて「普通に」所属していたナチスのように、国家規模の事象にも発展しうることを示唆している。また、夫やその仕事仲間に嘲笑されて去る妻の後ろ姿を、夫目線の格子窓越しにとらえた映像には、彼女の失意が強烈に滲み出ていた。人心の機微を、こんなに細かく描く監督でもあったのか。ファスビンダーでは珍しく、ソースミュージックのアラブ歌謡曲の他は、音のない静かなシーンが多い
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