「人には自分の生きる世界がありそれは変えられないんだ。
柵の上からこっちを見ていたそばかすだらけの男の子を見つけた日からずっと努力したがそれを変えることはできなかった・・・」
「一緒に住もうよシェーン」
「もう戻れないんだよジョーイ。人を殺してしまったんだ、もう取り返しがつかないんだ・・・。
家に帰ったらママにこの町で銃は要らなくなったと話すんだ・・・。
家に帰りなさい。そして立派な人間になるんだよ」
正統派の西部劇を語るには外してはならない名作映画。
1980年代のシネマコンプレックス導入前の巨大なスクリーンに滑り込んだリバイバル上映で、馬にまたがってやってくるシェーンの姿は大迫力、心震えるものがありました。
スライスレモンの模様(車輪の模様が正しいのですが幼い時の印象です)のベルトとインディアンのような揃いの上下で登場するシェーン(アラン・ラッド)は以外と小さく感じました。
山に囲まれた平原を馬で旅するシェーン(アラン・ラッド)は開拓者のジョー・スターレット(ヴァン・ヘフリン)の小さな土地を横切る許可をもらい、水をもらいスターレットの息子のジョーイ(ブランドン・デ・ワイルド)と会話し一時を過ごすのですが、突然訪れたライカー一味と入れ替わるように土地から出るように言われます。
開拓の先駆けだったライカーは放牧で牛を育て、後から入ってきた開拓者が牧場を作り柵をめぐらすことを嫌い、新しい開拓者を叩き出したいと思っているのです。
ライカー一家はいつものようにスターレット一家を脅し立ち退きを要求するのですが、出て行ったように思わせたシェーンはいつの間にか戻り、スターレット一家の後ろに静かに立っていたのです。
シェーンはスターレットの友人を名乗りライカーは危険を感じ何事も起こさず去っていきます。
スターレットの妻マリアン(ジーン・アーサー)はスターレットにお礼にシェーンを夕食に誘うよう話します。
スターレットが牧場の真ん中にある大きな切り株を掘り起こすことに苦労しているのを見ていたシェーンは夕食のお礼に黙って切り株の掘り起こしをはじめます。
2人はやがてスターレットが2年の歳月をかけても掘り起こせなかった切り株を掘り起こし、いつの間にかシェーンは腰のガンベルトを外し、スターレットの牧場を手伝うようになります。
遣いで一人街に出たシェーンはスターレットと「いざこざを起こさない」約束をしていたためライカーの手下クリス・キャロウェイ(ベン・ジョンソン)の挑発を無視します。 しかし、クリスが「シェーンは腰抜け」と吹聴したことで開拓者の間にもシェーンを馬鹿にする空気が流れてしまいます。
シェーンは再び買い出しに出掛けた時、クリスと対決しクリスを叩きのめしたのですが、ライカー一家に袋叩き状態になり、スターレットが加勢し2人は勝利を収めます。
ジョーイは父とは違う寡黙な流れ者シェーンに惹かれて行きます。シェーンはスターレットの妻マリアンに惹かれ、マリアンはシェーンに惹かれていく自分に気付き自分に言い聞かせるようにジョーイに話します。
「ジョーイ、シェーンを好きにならないで」
「どうして?」
「その方がいいの」
「何かあったの?」
「いいえ」
「なぜ?ママ」
「彼はいつか去る人なの。好きになりすぎると悲しくなるわ・・・」
ライカーは報復のためにシャイアンに遣いを送り、殺し屋の「早打ちウィルスン(ジャック・パランス)」を雇い入れます。
ウィルスンは法に触れないように開拓者を殺すために開拓者のトーレーを挑発し、銃をとるように仕向け圧倒的早撃ちでトーレーの命を奪います。
開拓者の多くがウィルソンを恐れ農場を捨てようとし始める中、スターレットはライカーの呼び出しに、罠とわかっていながら単独で会いに行こうとします。
マリアンにスターレットを止めるように頼まれたシェーンは互角の殴り合いの末、銃床でスターレットを殴り付けスターレットは気を失います。
シェーンはマリアンとジョーイに別れを告げるとスターレットの代わりにライカーの元へ向かいます。
シェーンは正当な戦いでウィルスンとの早打ちに勝ち、ライカーを撃ち殺し、ライカーの弟の銃弾を受けながらも勝利します。
牧場から一人シェーンを追いかけ、一部始終を見たジョーイは一緒に牧場へ帰ろうと言うのですがシェーンは・・・。
こだまするジョーイの「シェーン カムバック」が印象に、残ります。
スターレットがシェーンを連れてくることが予想される展開なのですが、酒場でスターレットを待ち受けるのは3人だけなのですが、そこがこの映画のいいところなのかもしれません。
子供の頃は後半部のシェーンの抜き打ちが印象的で、前半部にシェーンとマリアンの叶わぬ思いがあることには気がつかなかったような気がしています。
1951年『陽のあたる場所』でアカデミー賞監督賞を受賞したジョージ・スティーヴンスの1953年 の作品です。その後1956年『ジャイアンツ』で再び監督賞を受賞し ジェームス・ディーンを世に送り出し、1959年 『アンネの日記』・ 1965年『偉大な生涯の物語』を監督しています。
主演のアラン・ラッドはシェーンの主演で一躍一流俳優の仲間入りをするのですが、監督の次回作『ジャイアンツ』のジェット・リンクの役を断っており、ある意味ボタンのかけちがいをしてしまったのかもしれません。
子供の頃アラン・ラッドとジョージ・リーブス(TV版スーパーマン)の2人は「自殺した俳優」として有名でした。