140字プロレス鶴見辰吾ジラ

シェーンの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

シェーン(1953年製作の映画)
4.0
【抑制と解放】

名作「シェーン」を見ました。非常に染み入るような西部劇。流離いの旅にて立ち寄った村でシェーンは、ある家族とそして村のために戦う決意をします。クライマックスは一瞬でラストシーンは長く語られることになります。西部劇と言ったら村を牛耳る悪人を自慢の拳銃捌きで打ち倒すものと思いましたが、本作での銃撃はほんのひとかけらのようなシーンです。しかしながら憧れだったり、脅威だったり、そして瞬間の力強さだったり印象的です。酒場で罵られ、そして殴り合いになり、そして受難のときがあり、前半部はあくまで日常と悪党の影。それでも村を奮い立たせようとする者の向こう見ずな泥臭さやプライド、ある家族のために男臭く殴り合うシェーンの存在とまだ純粋な憧れを宿す少年の交差、そしてラストの決闘の抑制/抑圧された物語が銃声の刹那で決着がつくシーン、そしてそれまでの加速する感情が雄弁に物語ります。かの有名ラストシーンへ繋ぐ少年への語りのシーン。純粋な少年と殺しの世界に生きる放浪者の世界の違いを教えて、こちらに来てはいけない強い男に育てと言葉を残し去って行くシーンは、英雄というには些か汚れた者ではあるものの永遠に語りつぐ後ろ姿となるところに染み入るような西部劇であるところの「シェーン」を背負わせておりました。