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潮風とベーコンサンドとヘミングウェイのemiのネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

フランク役にはリチャード・ハリス、『許されざる者』ではガンファイター イングリッシュ・ボブ、『ハリーポッター』シリーズではダンブルドア校長と役の幅が広いバイプレイヤー。気品ある好好爺から粗野な船乗りまで演じ分けの幅が広く同一人物とは思えないほど。
ウォルト役のロバート・デュヴァルも同じくで『ウォルター少年と、夏の休日』では無愛想でとっつきにくい老人を演じており、本作のキャラクターとは真逆。役者本人のキャラクターを見失いそうになるほど、フランクもウォルトも魅力的に描かれている本作。

対照的な2人の友情物語というテーマ自体はありがちなのだが、この年齢になって育まれる友情物語はひと味違うなという感じ。粗野なフランクは全裸腕立て伏せが日課で、早々にこれどうすんだよって感じのシーンで始まるも、髪ぼさぼさ、ファッション微妙だったのがウォルターに影響され少しずつ気品を身につけていくし、ウォルターもいつも同じ席でいつも同じベーコンサンドをかじってお気に入りのウエイトレスと同じ方向のバスに乗るのが日課という陰キャムーブなのだが、フランクに触発されて積極的な行動も取れるようになっていく。歳を取っても人は変わるのだな。

不器用だけど気の良いフランクは「そのベーコンサンドは腐ってる(から一緒にカフェ行こうぜ)」とウォルトを誘ったり、結構お茶目で可愛らしい。(勿論ベーコンサンドは腐ってない)2人とも相応に悩みもあったり寂しさや孤独を抱えていたりするんだけど、時にはさりげなく、時にはおせっかいな優しさでお互いに癒やしと刺激を与え合い、充実した日々を送り始める過程が微笑ましく描かれている。特にウォルトに散髪をしてもらってスーツできめたフランクは格好良くて好き。

少年みたいにはしゃぐ二人、案の定喧嘩しちゃったり、後悔してしゅんとしちゃったり。お決まりの展開ながらもにやにやしてしまった。

せつないラストを迎える作品だけど、だからこそ彼らの関係が特別な思い出になるのだろうと思ったりもして。こちらは勧めていただいて観た作品だったのだけど、出会えて本当に良かった。
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