horahuki

チャドのhorahukiのレビュー・感想・評価

チャド(1984年製作の映画)
3.5
火炎放射器と戦う気かね?

浮浪者が町からどんどん消えていっているのに捜査しない方針を貫く署長に嫌気がさしたポッシュ警部が、浮浪者向けの慈善事業やってるシェファードと一緒に町に潜む闇に迫っていくというバディムービー的楽しさのある社会派モンスターホラー。

『アス』の冒頭でVHSが置かれていた本作。良い機会なので2年くらい積んでたVHSを見てみたら、置いてた理由もわかる程度には似てたんで『アス』前に見ておけば良かったと少し後悔…。

根底にあるのは『アス』とほぼ同じテーマなわけですが、そんなことよりも皮膚ドロドロなクリーチャー「チャド」さんのデザインが本作の最大の魅力ですわね。しかも目がピカッと光ったり首が捻れたり伸びたりといったギミック付きなのが堪んないです。『エクストロ』もそうだけど、この時代の人型クリーチャーの造形はツボ率高め。

国が作り出した負の遺産を国民に押し付け見て見ぬフリをし続ける胸糞悪さと理不尽さ。それに対して抗う手段すらなく、押し込められ封殺されてしまう無力感とやり切れなさを冒頭の「靴の回収」だけで表現してしまう導入はスムーズだし、関係者が警察だったからこそ問題が顕在化するのだという「持たざる者」に対するこれ以上にない皮肉だというのもうまい。

警察と牧師。記者とカメラマン。この2タッグがそれぞれに闇に切り込んでいくのですが、貧困問題に熱心な牧師とカメラマンがそれぞれ足がかりとなり、公権力とメディアを闇に対峙させるという役割分担は面白かったんだけど、ここがそれ程うまく機能しているように思えなかったのは残念なところ。ただ、それ程までに強力で圧倒的な権力の壁を見せつけるという面では役割を果たしていたように思います。

本作はラストで警鐘を鳴らしてるとはいえ、「手を差し伸べる」という行為を柱として描いているわけですが、『アス』では最初から自ら行動を起こすという方面に変化しているのが面白いですね。本作から30年以上経過したにもかかわらず、社会としては後退してしまっているとジョーダンピールは考えているということでしょうかね。

そんでシュールなところも多くて、じいちゃんをクリーチャーに連れていかれたのに特に目立った反応をすることもなく一瞬で心ここに在らずな放心状態に様変わりしちゃう孫娘ちゃんの諦め方面への切り替えの早さには笑ったし、シャワー浴びてる最中に排水管から大量の血が噴出してきたのに風呂から上がって平然としてる強メンタルな女性さんには尊敬しかないですわ。あと、公衆電話かけようとしてる人のコインを寸前で奪って食べちゃうオッサンの仕事への情熱には感服いたしました。

めちゃ評価低い作品だけど、私的には結構好き。国内版のDVD発売されてるし、レンタルの取り扱いもあるので『アス』がハマった方は是非!続編もあるみたいだけど、鑑賞難易度高そうだし物語に全く繋がりないみたいだから、とりあえずそっちは後回しで良いかな。いつか見たいけど!
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