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10番街の殺人のHKのレビュー・感想・評価

10番街の殺人(1971年製作の映画)
3.8
名作も凡作も駄作もたくさん撮ってる職人監督リチャード・フライシャーの日本劇場未公開作。
同監督作としては本作の少し前の名作『絞殺魔』と同じく実在の事件の映画化です。
『絞殺魔』は1960年代のボストンでしたが、こちらは1940年代のロンドンの下町で起きた女性ばかりの連続猟奇殺人。

原題は“10 Rillington Place”(リリントン・プレイス10番地)でただの地番。
『絞殺魔』と違い、犯人が誰かは最初からわかった状態で話は進行します。
本作は実際の殺人現場で撮影され、セリフも実際の証言を再現したというこだわりの作品。
グロ描写は無いのに、不気味さ残酷さおぞましさが画面から滲み出し、さらに想像力をかき立てる演出はさすが。

不気味な変態殺人犯を演じるのは後に監督としても名を上げるリチャード・アッテンボロー(当時48歳)。
好印象だった『大脱走』『砲艦サンパブロ』『ジュラシック・パーク』『34丁目の奇跡』などの役柄からは考えられない異常で危ないオーラが漂っています。

犯人と同じアパートに越してきて餌食になる若妻ジュディー・ギーソン(『いちも心に太陽を』)は後に『ブラニガン』でもアッテンボローと共演。
犯人に利用され、妻を殺した濡れ衣を着せられる哀れな夫をジョン・ハート(当時31歳)が熱演しており、これまで私が見た中ではデビュー作の『わが命つきるとも』に次ぐ若さ。

フライシャー監督は70年代だけでも1ダース以上の作品を撮っていますが、本作はその中でも代表作の1本と言っていいでしょう。
ちなみに70年代の他のフライシャー作品で私がとくに好きなのは『トラ・トラ・トラ!』『センチュリアン』『スパイクス・ギャング』あたり。

ところで、終盤のクリスティ(アッテンボロー)と警官の職質シーンは、『大脱走』の終盤でのバートレット(アッテンボロー)とゲシュタポのシーンを思い出しました。
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