マサキシンペイ

苦役列車のマサキシンペイのレビュー・感想・評価

苦役列車(2012年製作の映画)
3.3
森山未來のドブネズミのような怪演。
イケメン俳優が非モテ男をカンペキに演じきっている作品というのが個人的にとても好きだ。好きというより、最も演技力を問われる役柄だと思うので、自然とその俳優に注目したくなる。

森山未来演じる主人公の貫多は中卒の日雇い労働者で、稼いだ金を全て酒と煙草と風俗で溶かし、借金は重ね家賃も滞納し住む家もままならないようなクズ人間。セックス、というか射精することしか頭にない。将来に希望も夢もないし、おまけに人の気持ちも分からず当然女にもモテない。

ちなみに、この映画の公開時のキャッチコピーは「友ナシ、金ナシ、女ナシ。この愛すべき、ろくでナシ」だそうだが、言動を見るに、「不器用でだらしないけど、どこか憎めない愛すべき人」というレベルのキャラクターではない。
発達障害者的な意味合いで、たぶん保護が必要か否かギリギリのところで自立を強いられている社会的弱者だ。
コメディータッチの作品ではあるが、貫多というキャラクターの笑えないドドメ色のホンモノ感が、森山未来によって見事に実現してる。

ところで、とにかく森山未來が強烈な作品だが、前田敦子という女優を発見できた作品でもある。特別な美人というわけではないが、可愛らしい、でも垢抜けない文学少女、というような役柄がハマり役で、とてもリアリティがあった。
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