このレビューはネタバレを含みます
父を尋ね母と西行する途上で厨子王と安寿の兄妹が攫われ丹後の山椒大夫に売られるも後年厨子王が脱走して丹後守となって奴婢を開放するお話。原作森鴎外。
やっぱり流石に無理がありすぎる気のする荘園経営の描写。閉鎖性もあまり感じられない。なるほど姉弟を逆にしていくらか緩和してる箇所もある気がしますが脱走のシーンが逆に弱いような。
それでも抜群のカメラワーク。人物の追い方が素晴らしいです。光の捉え方も絶妙で、こんな完璧に擬似夜景撮れるものなんですね。圧巻のラストカット。
仏教説話じみた要素はほぼ消え去り、思想性が強い展開と描写。三郎の存在感が弱かったり山椒大夫はそのまま消えたりして、官職辞任も無理がある気が。でも衣冠束帯の厨子王の見栄えは印象的。
内容の悲惨さに比べて表現は折り目正しく真に迫るものはなかったのですが、美しい撮影が浮世離れした雰囲気に相応しく、原作が頭になければもっと心に残ったのかなと感じた作品でした。