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暗殺の詩/知りすぎた男どもは、抹殺せよのHKのレビュー・感想・評価

3.5
『冒険者たち』のロベール・アンリコ監督が『ラムの大通り』と『追想』の間に撮った作品ですが、存在すら知りませんでした。
テキトーな邦題に長ったらしい副題ですが、原題はシンプルで“Le Secret”(秘密)。
邦題に“暗殺の~”とつけたのは同じくトランティニャン主演の『暗殺の森』からの単純な流用でしょうか。原題の方がシックリきます。

あの名作『冒険者たち』と同じく主要人物は男2人に女1人の3人ですが、あの3人の関係性とはほど遠く、ストーリーもテイストもまるで別物です。
冒頭、監禁されていた男がある施設から逃亡するところから映画は始まります。
なんの施設かはわかりません(看守役は『夕陽のギャングたち』の政府軍の大佐)が、男は山村に逃げ込み、自分は国家機密を知り政府に追われていると言ってそこに住む夫婦に匿ってもらいます。しかし同じ頃、精神病院から殺人犯逃亡のニュースが・・・

追われる謎の男を演じるのは、挙動不審な男をやらせたら右に出るものはいないジャン=ルイ・トランティニャン(当時44歳)。
この謎の男を匿う夫婦に『追想』『ニュー・シネマ・パラダイス』のフィリップ・ノワレ(当時44歳)と、ソバカスが印象的な『雨の訪問者』のマルレーヌ・ジョベール(当時34歳)。

コノ男は無実の被害者?それともやっぱり異常者?と常に怪しいトランティニャンのつかみどころの無さが絶妙。
この人これまでに他の役でも本物の変態?(失礼)と思ったことが何度もあります。
ちなみにA・ドロン共演で実在の凶悪殺人犯を演じた『フリックストーリー』はこの翌年。
(トランティニャンが持つ拳銃はワルサーP38の確立が高い気がします)

それにしても終始妙な空気の映画でした。
軍の演習のくだりなんてギャグだし。
音楽は今回フランソア・ド・ルーベではなくてエンニオ・モリコーネでしたが、あまり印象に残っていません。

『ふくろうの河』や『冒険者たち』は大好きなんですが、アンリコ監督作は微妙な作品も多いなとあらためて実感。
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