カツマ

若者のすべてのカツマのレビュー・感想・評価

若者のすべて(1960年製作の映画)
4.2
この世の中とは優しく寛大な人間を不幸のどん底へと突き落とす、血も涙もない場所なのか。美しい涙の結晶は誰も救うこともできずに、ほろ苦い若者たちのレクイエムが延々と奏でられるばかりだ。南北イタリアの格差と社会にはびこる閉塞感を、5人の兄弟それぞれの視点から描き出し、都会に溶け込めない南イタリア人の悲哀をも克明に映し出してみせた。若きアランドロンの瞳からポロポロと零れ落ちる涙の雫は、まるで宝石のように美しく、透き通るほどに悲しかった。

イタリア南部の貧しい故郷から北イタリアのミラノへと移住してきたパロンディ家。
ミラノ在住の長男ヴィンチェンツィオを加え、何とかアパートを借り、母1人男兄弟5人で住まうことになった。次男のシモーネ、三男のロッコは拳闘(ボクシング)に出会い、次第にのめり込んでいく。勤勉な四男のチーロ、まだ小さい五男のルッカはまだ働きに出る歳ではない。そんな家族のもとへ、後に彼らの運命を左右することになる女性ナディアが現れる。彼女の登場で運命の歯車はあらぬ方向へと動き出していく。

ルキノ・ヴィスコンティはモノクロの影の部分を写真のように切り取り、不安に満ちた映像世界を作り上げた。なかでも教会の屋上での恋人達のシーンでは、まるで運命の流転を神が見下ろすかのようなカットが魅力的だ。
『ロッコと兄弟達』というタイトルの通り、最も重要なキャラクターは三男のロッコ。そして凄まじい勢いで堕落していく次男のシモーネ、彼を惑わすファムファタールことナディア。この3人のボタンの掛け違いは負のスパイラルを巻き起こし、物語を戯曲のように美しく崩壊させていく。180分弱と長いが無駄なシーンは皆無。最後まで集中して鑑賞することができました。
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