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ヘラクレス 魔界の死闘のhorahukiのレビュー・感想・評価

ヘラクレス 魔界の死闘(1961年製作の映画)
3.8
有無を言わさぬ脳筋アクションと
幻想的なゴシックホラーの融合!

彼女のために世界を危機に陥れておきながら、親友には世界のために彼女と別れろと言い放つヘラクレスさん…パネェ!

巨匠マリオバーヴァ監督による『血ぬられた墓標』に続く(正式にクレジットされている作品では)監督2作目。今度は当時流行ってたヘラクレスを題材としたファンタジーホラー。

彼女と結婚するために久々にエカリアへと帰ってきたヘラクレスは、彼女が正気を失ってしまったことを知る…。巫女の神託によれば死の国にある石を持って帰ってこれば彼女は正気を取り戻すとのこと。超危険なとこなんで、暇してる親友のテセウスとお調子者のオッサンの3人で死の国を目指すことになるが…といった感じのお話。

冒頭のアクションからもう既にバーヴァらしさ全開で一気に引き込まれた。数カットでヘラクレスとテセウスのキャラクタと関係性を最低限示した後に行われる上と下を同時に画面内に収めながらの無双アクション。下から見上げる上の戦闘。そして上からの攻撃をも画面内におさめ、ヘラクレスの強靭さを肉付けする。チープだけど派手な特撮での幕切れとかテンション上がる!

そんなカッコ良くてチープなアクションからスタートする本作ですが、すぐにバーヴァの本領発揮と言わんばかりにゴシックムード溢れる舞台へと場所を移す。ヘラクレスたちが向かう死の国は、赤、青、緑等の色彩が混じり合った照明が生み出す現実離れした美しくも気味の悪い空間として描かれており、後の『バンパイアの惑星』を思わせるような異界としての説得力を持たせたものとなっている。

その中で襲いくる試練に打ち勝ちながら進む道のりはこれまたチープなんだけど、異次元な色彩感覚で表現された死の国の空気感とヘラクレスの脳筋思考が相まって、ツッコミなんて許さないようなパワーと有無を言わせない楽しさがあってめちゃ良かったし笑った。

全く光の入らない虚ろな目で浮遊するようにこちら側へと迫る中で緑の照明と闇を交互にくぐり抜ける見せ方とか、リーが女性へと迫るシーンとか『白い肌に狂う鞭』を思い出すし、『バンパイアの惑星』と同じく後の片鱗が見え隠れするのが面白かった。ヘラクレスの行く先を照らす太陽の赤を覆い隠すかのように広がる闇だったり、割れる海だったり、やっぱりバーヴァは現実離れした空間をムード全開で作り出すのがうまい!ファンタジーな本作でもバーヴァらしさが遺憾なく発揮されてました。

バーヴァがハマーホラーから影響受けまくってんのは明らかだけど、初の単独監督作として選んだ題材から考えると、中でも吸血鬼には特別なものを感じてるのかもしれません。二作目である本作でも吸血鬼モチーフが使われていて、地下壕に鎮座するたくさんの棺のひとつが突然開き、中から女性が『吸血鬼ノスフェラトゥ』のように起き上がったり、その手引きをするのが『吸血鬼ドラキュラ』のクリストファーリーだったり。

そして明確に吸血をするわけではないのですが、リー演じるリコは闇の神々に命じられ血を自身の体内に取り込もうとして行動するという、あからさまなドラキュラオマージュも見せつけてくれます。

そんな感じで、アホくさいけど楽しい映画でした。字幕なかったけど、海外版DVD買って良かった!
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