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タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.0
【監督スティーブン・スピルバーグ】
第26回監督作品
◆ジャンル:
 アドベンチャー、ファンタジー
 
〈見処〉
①ベルギーの有名漫画を作品化!
・『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』(原題:The Adventures of Tintin: The Secret of the Unicorn)は、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)以来3年ぶりとなる、2011年12月21日に全米公開された、スティーブン・スピルバーグによる第26回監督作品
・少年記者タンタンと愛犬スノーウィは、ノミの市で古い帆船ユニコーン号の模型を購入。その直後、謎の男サッカリンから模型を買い取らせて欲しいとせがまれるが拒否。
・タンタンはユニコーン号に秘密を感じ、図書館で調べたところ、かつて海賊に襲撃され、財宝と共に消えた軍艦だったことがわかる。タンタンが自宅に戻ると模型は消えていたが、先ほど模型を置いた棚の裏側から金属ケースに入った謎の羊皮紙を見つける。
・さらにその直後、タンタンは羊皮紙を探求するサッカリン一味に誘拐され、貨物船カラブジャン号に乗せられる。そこで、同じく囚われの身だったハドック船長と出会い共に脱出。こうしてタンタンはユニコーン号の財宝を巡る争いと、海賊たちの過去の因縁に巻き込まれてゆく…
・本作はベルギーの漫画家エルジェによる連載漫画『タンタンの冒険』シリーズのうち『なぞのユニコーン号』『レッド・ラッカムの宝』『金のはさみのカニ』を原作としている。
・本作はスピルバーグ監督作『レイダース/失われたアーク《聖櫃》 』(1981)との類似性が指摘されたことを機に、スピルバーグと原作者エルジェが映画化検討のため、1983年の『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』撮影中に会合を持つ予定だったが、エルジェはその直前に急逝。
・結局は、タンタンを子供版『インディ・ジョーンズ』としていたスピルバーグの企画構想は『グーニーズ』や『フック』に分岐し、映画化権はいちどエルジェ財団に返上されていた。
・しかしながら、スピルバーグは2002年にに映画化権を再取得。当初予定していたプロデューサーを『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソンに任せ、30年越しのプロジェクトに対し、自ら監督を務めた。

②スピルバーグ、
 モーションキャプチャーに進出
・本作はスピルバーグにとって初の全編3Dデジタル作品。フィルム撮影をモットーとするスピルバーグが、本作をCGアニメーションにて製作を決心したのは「愛犬スノーウィ」と「自由なアングル」の描写を行うため。
・既に『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(2005)のスポット監督として、
アナキンVSオビ=ワンの戦闘シーンをアニマティクス演出しているスピルバーグにとっても、全編CG作品は未知数。その実現のため、スピルバーグは、ニュージーランドの特殊視覚工房である、WETAデジタルとその主宰者である、ピーター・ジャクソンに連絡をとり、協力を養成。
・ピーター・ジャクソンと、その盟友アンディ・サーキスは、モーションキャプチャーをデモンストレーション。ジェームズ・キャメロンとロバート・ゼメキスともにデモを見たスピルバーグは、本作の「モーションキャプチャー」撮影を決定。
・第一人者サーキスの他に、ジェイミー・ベル、ダニエル・クレイグ、サイモン・ペッグ、ニック・フロストなど人気俳優をキャスティングし、スピルバーグとヤヌス・カミンスキーは、実写映画と同様の撮影を行ったが、新技術による撮影場面では、ギレルモ・デル・トロ、スティーブン・ダルドリー、デヴィッド・フィンチャーなどの人気監督が見学に訪れる、業界注目の作品であったようだ。

③監督作が同時公開!!
・『ジュラシックパーク』と『シンドラーズリスト』(1993)、『アミスタッド』と『ロストワールド』(1997)、『宇宙戦争』と『ミュンヘン』(2005)…スピルバーグが社会派作品を製作する際は、娯楽作品と公開時期を近接させ、失敗時のリスクヘッジをしている。
・本作の場合『戦火の馬』と全米公開日は僅か4日違い。スピルバーグ作品が同時に2作公開されていたことになる。

④結び…本作の見処は?
○: 実写では出来ないようなカメラアングル、とくに終盤のカーチェイス場面は迫力満点の描写。
○: 愛犬スノーウィを描くにはCGアニメーション描写は必要、に納得出来る活躍を見せている。
○: CGによる風景美や、摩訶不思議なクロスカッティング演出は、大いに見処あり。
▲: 原作の知名度の高いヨーロッパでは大ヒットしたようであるが、キャラクターに思い入れがないと、ただのドタバタ・アクションに見える。
×: CGアニメーション・キャラクターにダニエル・クレイグ、サイモン・ペッグ、ニック・フロストの名残が全く見えず、これではただの声優だけの出演と変わらない。
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