あなぐらむ

みな殺しの拳銃のあなぐらむのレビュー・感想・評価

みな殺しの拳銃(1967年製作の映画)
3.9
べーさん監督第三作めは一転、モノクロのフィルムノワールの逸品。
同年の野村孝「拳銃は俺のパスポート」の流れを汲み、物語を図式化して、スタイリッシュな構図や画の面白味を試したかの様な仕上がり。大組織に立ち向かう三兄弟の長男を宍戸錠が終始寡黙に演じ、渋味全開。
宍戸錠は黒田、ライバルの二谷英明は白坂、組織のトップは赤沢と、モノクロに対してキャラの名前に色をつける遊び。
三兄弟の次男に藤竜也、三男は岡崎二朗が演じ、藤竜也はクールさの中に凶暴さを持つキャラを演じ中々いい感じ。
沢たまきがしっとりと演じる紫乃も良く、山本陽子もまだ若くてぴちぴち。

クライマックスの銃撃戦は絶賛工事中の東名高速。何もないアスファルト空間を西部の荒野に見立て、工事の足場という砦で銃撃を高低に立体的に見せるこのシーンだけで観る価値がある。
最後は二谷宍戸の歩み寄りながらの一対一。友情と掟の間で死んでいく二人は香港ノワールに転生する。
長谷部監督の映画は物凄い男性曲線で作られてて、映画の構成としての中押しが無い。クライマックスまでひたすら溜めてドバッと噴出させる。なのでロマンポルノの中でバイオレンス部分が研ぎ清まされて「犯す!」や「襲う!!」が産まれた。