イタリアの名匠デ・シーカが監督兼主演を務めたキャリア最初期のコメディ。
金欠で家財の差し押さえを通達された小児科医が孤児院の担当医の職に就き、美しい少女テレーザ、妖艶なダンサー、天然な婚約者との四画関係に翻弄される物語です。
デ・シーカが名を上げたネアレアリズモ期の作品に比べると驚くほど素直な喜劇で、分かりやすい小ボケの数々に、程良くまとまるストーリーが楽しかったです。
舞台劇のようなスタイルも後の生々しさとは正反対で、観客ウケの良さそうな内容をきっちり提供できる演出家としての腕の確かさが感じられた気がしました。

ヒロインのテレーザ･ベネルディは18歳。
女子孤児院暮らしも残り１年です。院内で看護師の手伝いをしています。ベネルディは金曜日の意味です。
演じるのはアドリアーナ･ベネッティさんで、これが映画初出演です。

主演は監督です。
借金返済のために、自宅の売却を検討中の小児科医の役です。件の女子孤児院で勤務することになりました。

孤児の皆さんはちびっ子からお姉さんまで全員女子で、院長や職員も全員女性です。
今どきだと、男性医師が何か良からぬことをしでかしそうです。盗撮とかセクハラとか、もっと悪どいこととか。

この映画ではそういうことは起きません。もっとふわっとしています。
でも結末は、ﾜｲ的にはややもやっとしました。

喋ると勝手に韻を踏んでしまう人がいます。

アドリアーナさんは1919年12月生まれ、監督は1901年7月生まれで、歳の差18歳。

• #歳の差カップル

男盛りで輝く俳優ヴィットリオ・デ・シーカに触れた喜びを多くの方々に報告したい

「金曜日のテレーザ」

現実の視覚的な再現を超えた不思議な喜びを約束してくれる作品がそこに存在する以上、既に数百本、数千本、それどころか万単位にも届きそうな数の作品を観ていようが、その都度、映画そのものが発明された瞬間に立ち会ったような若々しい身振りを、私たちは発見出来ます。

生誕から100年以上の歴史を誇りながら今なお(観たい映画)が途絶える事なく出現するのもそうした理由によります。

（観たい映画）というものは何も21世紀の現在からのみ出現してくるとは限らない。人ひとり一生分に近い歳月を経てようやく日本の私たちの瞳に届く映画だって多数存在します。

と、ここに、DVD10枚が¥1980（税込）で購入出来るコズミック出発という筆舌に尽くし難い頼もしい市場があります。

安価で購入出来ると言っても収録されている作品がパプリックドメイン化した（普通の名作）などと思わないで頂きたい。そんなものTSUTAYAでも映画専門チャンネルでも履いて捨てるほど転がっているのですから。

とりわけジュゼッペ・デ・サンティスの『にがい米』がパッケージされたイタリア映画コレクションのラインナップはもはや（事件）と言っても差し支えない豊かさです。

収録作品の一本、『金曜日のテレーザ』では監督ヴィットリオ・デ・シーカ自身が主演を兼ねて、まさに男盛りのスターとして揺るぎなく輝いております。
まずは俳優ヴィットリオ・デ・シーカに初めて触れた喜びを多くの方々に報告したい。
およそ8年後あたりから（ネオリアリズム）の巨匠と謳われた作品群の（なす術もない）ある種の暗さはここには微塵もありません。

作風は明らかに当時既に名を馳せていたルビッチが意識下にあるブルジョア艶笑劇ですが、役柄への同情を一切当てにしない堂々たる美男子ぶりのヴィットリオ・デ・シーカの姿に（神話的スター）というものの生成に初めて立ち会えた思いです。

今現在、皆様の手元に自由に使える2500円があるのなら躊躇う事なくこの10枚を購入しなければならない。

『金曜日のテレーザ』の他にも『子供たちは見ている』どころかロッセリーニの『殺人カメラ』や『ストロンボリ／神の土地』やフェリーニの珍しい『白い曹長』から上記のジュゼッペ・デ・サンティス『にがい米』アレサンドロ・ブラゼッティ『雲の中の散歩』ルイージ・コメンチーニ『パンと恋と夢』他まで収録されて送料税込で¥2500。

どこまでも肥大化していく消費社会の中で¥2500で出来る贅沢など（少しマシなランチ）程度です。ならば、そのランチ代一食我慢してご購入されたし。
検討の余地などありません。マジで。